森で、仲間の動物たちとしあわせにくらしてきたキツネがいました。
年をとり、弱ってきたキツネは、お気に入りの場所で、だいすきな森の景色をながめたあと、そっと目をとじました。
横たわったキツネのそばへ、つぎつぎに動物たちがやってきます。
しんとした森のなか。
白い雪が舞いはじめ、オレンジ色のキツネの上にやさしく降りかかります。
長年の友人だったフクロウがキツネに寄り添い、リス、イタチ、クマ、シカ・・・
一ぴき、また一ぴきとやってきた仲間たちだれもが、キツネのことを思い出します。
思い出が語られるたび、キツネが横たわる雪の下から、いつしかオレンジの芽が顔をだし、すこしずつふくらんでいって・・・。
亡くなった友を想う静謐な空気。いきいきとした色の動物たち。
ドイツ生まれの作家、ブリッタ・テッケントラップが描きだす世界は、静けさとあたたかさが同居するふしぎな美しさを感じさせてくれます。
「キツネをおもいだすたびに、おもくしずんでいたみんなのこころは、かるくはれやかにかわっていくようでした。」
キツネがのこしたもの。のこされた友だちの生きる支えになったものとは・・・?
この世に生まれ、みな旅立っていく。
友を見送る心が、堂々と色あざやかに、絵本で表現されたお話です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む