自分の好きなものの魅力を、たくさんの人と分かち合いたい。
なにかを大好きになったら、子どももおとなも、人はみんなそう感じるもの。
でも、そう感じるのは人だけではなかったようで――。
ひとり、岩穴に住むおおきな体のフランクリン。
緑の体に長い首、赤い翼に、小さなツノ。
そう、フランクリンは、だれもが恐れるドラゴンなのです!
でも、フランクリンがちょっと変わっているのは、本が大好きだというところ。
岩穴の住処にあふれる物語の山に埋もれ、フランクリンは今日も、ホタルやネズミやコウモリに、本を読んであげています。
ある日、もっとたくさんの人に本を読んであげたいフランクリンは、友だちをつくろうと、岩穴を出て遠くにお出かけ。
ところが、ドラゴンであるフランクリンを怖がって、人々は彼に近寄りません。
街に行けば住民は身を隠し、道ばたで出会えばみんな逃げ出します。
そんなフランクリンが森で出会った女の子、ルナ。
ドラゴンも本も大好きだというルナと、フランクリンはすぐなかよしに!
そしてふたりは、街のみんなが怖がらないように、ある計画を立てるのですが――。
本でいっぱいの洞窟。
雲に寝そべり、月明かりで本を読むドラゴン。
彼の読み聞かせる本に学び、踊ったり、お菓子をつくったりする、ネズミやコウモリ。
想像するだけでワクワクする、ファンタジックな光景のいっぱい詰まった宝箱のような作品です。
これがおもしろい、これが楽しいと、みんなに伝えたい。
フランクリンの抱く、そんな小さな祈りは、だれもが知っているもの。
そして、その楽しさを分かち合うことのできる友だちを見つけたときの、胸躍るようなうれしさも。
だからこそフランクリンのさみしさが、そしてうれしさが、自分のことのように心をゆさぶります。
ドラゴンが空をとぶファンタジーが好きなら、もちろん!
フランクリンと同じで本を読むのが好きなら、なおのこと!
そしてなにより、ひとつでも心から愛する物語を持っているのなら――。
きっとフランクリンは、あなたとも、とても良い友だちなってくれるはず。
(堀井拓馬 小説家)
続きを読む