『ごんぎつね』『てぶくろをかいに』など多くの作品を残す、新美南吉が書いたたぬきのお話に、『バルバルさん』『くまくまパン』などどこか飄々とした味わいが魅力の西村敏雄さんが、絵を描きました。
その名も『げたにばける』。
「げた」って、あの履物の下駄?
そう、そのとおり。
最近はなかなか履かない下駄ですが、むかしの日本人にとっては大事な履物でした。
さて、そんな下駄がどうしたのでしょう……?
ハンノキという木の下で、お母さんたぬきが子どものたぬきに、化ける事を教えていました。
お寺の小僧さんに化けるときは衣をつけて。
お侍に化けるときはひげをつけて。
色々こまかく教えるのですが子どものたぬきはちょっとしたところで完璧には化けきれません。ただ、下駄に化ける事だけはたいへんうまいものでした。
さあ、下駄に化けた子だぬきが転がっているところへ、下駄の緒を切って困った侍がやってきましたよ。
助かったとばかりに、子どもだぬきの下駄を履いていってしまったからさあ大変。
侍の体重が重くてつぶれそう!「ぐっ ぐっ」と思わず声を出してしまう子だぬき。
一体どうなってしまうのでしょうか。
侍にばれて、子どものたぬきは痛い目にあう?
いやいや、じつはこのお話、とても「いい話」なのです。
安心して最後まで読んでみてくださいね。
新美南吉のユーモアと、西村敏雄さんのあたたかい絵がぴたりと合って、ほのぼのとさせられます。
新美南吉はきつねやたぬきなど身近な動物に心を寄せて、あれこれお話を作って楽しんでいたのですね。
ちょっぴりドキドキすると同時に、なつかしくて優しいにおいのする絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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