女の子がズボンをはく。今では当たり前のことが、許されない時代があった。そんなことって、考えられる? それも、たった150年前の本当の話。
女の子が着ることができたのは、きゅうくつなドレスだけ。動きにくいし、息をするのも楽じゃない。だけど、それがおかしなことなんて、みんな思わない……でも、メアリーだけはちがった! 彼女はズボンをはいて、町へ出かけた。すると、とにかくもう大騒ぎ。
「とんでもない!」
「ズボンなんかはいて、後悔するぞ」
みんなの言葉には屈しないメアリーだったけれど、やっぱり胸にささる。どうして、みんなが文句をつけるのかわからない。そんな時、お父さんが言ったのは……。
この絵本の主人公のモデルとなったのは、後に女性初の軍医として活躍し、フェミニストとして知られたメアリー・E・ウォーカー。巻末には、その当時ズボンをはいて撮られた写真とともに、彼女の半生の解説も収められています。
常識だと思っていたことが、常識ではない時代があった。道を切り開いてくれた人がいた。それだけでも、子どもたちには大きなインパクトのあるお話のはず。そして印象的なのは、多くの大人たちが「かわってしまうのがこわい」と感じてしまうという事実。私たちは、いつだって変化していく時代のその「途中」にいるのです。とっても魅力的に描かれた、メアリーの姿に元気をもらいながら、自分たちにとっての当たり前を考えていかなくてはいけませんよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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