最近、ハンガリーから初来日もはたした「ラチとライオン」の作者、マレーク・ベロニカさんの最新作です。「ラチとライオン」のシンプルな洗練された絵も大好きだけど、このキップコップシリーズは自然の風景に溶け込む姿が描かれたとっても温かい雰囲気の絵です。こちらもとっても素敵です。
この可愛いキャラクターはいったい何の生き物なの?と思っていたらなんと植物。とちの実だそうです。せいようとちの木という大きな木があり、真っ白い花の中から緑色のとげとげのたまが顔をだし、秋になるとぱっくり割れてつやつやとした茶色い実をたくさん地面におとすそうです。実は食べられないけど、子供達は喜んで拾って人形や動物をつくって遊ぶそうです。なんだか日本で言ったらどんぐりみたいですね。実際にとちの実で作ったキップコップも見せてもらいましたよ。キュート!
さて舞台は冬のあさ。台所のものおきに住んでいるキップコップ、とってもさむくて目が覚めます。そとへ出てびっくり。ゆきにつつまれて世界中がまっしろです。探検に出たキップコップはお腹を空かして倒れているしじゅうからを助けます。聞くと、おともだちが私の様にならないように助けてほしいと言います。キップコップはくるみをかかえてしじゅうからを助けに出発します・・・。
キップコップの顔と同じ位の大きさのあるくるみを両手にかかえて歩く旅はかなりハード。そしてしじゅうからを驚かさない様にそっと身を隠してくるみを与えるキップコップ。てっとも健気で優しさにあふれているキップコップのすっかりファンになってしまいました。作者の自然に対する思い、厳しさと優しさがそのままお話に反映されている様です。季節を変えて色々な風景に登場したキップコップも見てみたい!まだまだシリーズで続きそうな予感。楽しみです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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