「なっちゃんは、おばあちゃんによく似ているなあ」
おじいちゃんにいわれて、なっちゃんはちょっと困り顔。
おじいちゃんたら、へんなの。
わたしとおんばあちゃん、ぜんぜんにてないのに。
「そうだ! なっちゃんに、〈ないしょのいいところ〉教えてあげる」
お買い物の途中、おばあちゃんはそういって、木のすき間に入っていってしまいます。
なっちゃんもおそるおそる、そこをくぐってみると——
なんと、一面のタンポポの花!
そこで、おばあちゃんの話してくれる子ども時代の話を聞くうちに、なんだかなっちゃん、ふしぎな心持ちになってきました。
「へーえ! おばあちゃん、子どもだったんだね!」
なっちゃんのそんなセリフが、とても印象的な一冊。
幼い感性から出た言葉のように思えて、しかし考えてみれば、私自身おとなになった今でさえ、両親や祖父、祖母の子ども時代を想像するのはむずかしいものです。
子どものころにおばあちゃんが好きだった場所で、おばあちゃんの思い出話を聞くうちに、おばあちゃんも自分と〈おんなじ〉子どもだったと知るなっちゃん。
そんななっちゃんのおどろきと、ちょっと気恥ずかしいようなうれしさとが、みずみずしく胸に染み入ってきます。
「そうだ、思い出した。おばあちゃんの子どものころも、こんなふうにタンポポがきらきらしてたよ」
ページの隅々まで細かく描き込まれた、木々の葉っぱの緑や、タンポポの花の黄色は、おばあちゃんのそのセリフのとおり、きらきらと輝いて見えるほどにあざやかです。
でもいちばんのみどころは、子ども時代のおばあちゃんとなっちゃんとが見せる、ほんとうにそっくりなその笑顔!
多くの言葉をもちいずに、家族の温かさを深く描き出した、心温まる作品です。
(堀井拓馬 小説家)
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