ひとり旅の好きな男の子ケンは、あこがれの特急マリン号に乗って、出張中のお父さんが住む海辺の町にひとりで出かけます。窓から外を眺めていれば三時間なんてあっという間と思った矢先、「しつれい、ここ、あいてるかい。」といって隣の席にやってきたのは、すらっとやせた黒いねこでした。ねこはサンゴロウと名乗り、失われたうみねこ族の宝を探しに行くことが旅の目的だと語ります。そのまま詳しいいきさつを聞き、宝の場所が書いてある古い地図を見せてもらったケンは、「いっしょに、くるかい。」と誘われて、サンゴロウと一緒に宝さがしに行くことに。さて、ケンとサンゴロウの行く先には何が待っているのでしょうか。
ケンにとってのはじめてのひとり旅は、サンゴロウとの出会いによって、思いがけない冒険へと繋がっていきます。ほんの1時間ぐらいと出発した宝探しは予想外の危険や冒険の連続。しかし困難に遭う中で、ケンとサンゴロウはお互いに助け合い、相棒のように信頼を深めていきます。
お話を書かれたのは、児童文学作家の竹下文子さん。ケンとサンゴロウが宝を目指して歩く自然の描写がひとつひとつ丁寧に描かれ、まるで自分も一緒に冒険しているかのように潮風を感じたり、足元に木の根やゴツゴツした岩を感じたり、山道を歩いているような臨場感が感じられることでしょう。またひとり旅から思わぬ冒険に繰り出すケンの気持ちも丁寧に描かれ、物語にどんどん引き込まれていきます。
そして、物語を通して大きく惹きつけられるのは、なんといってもサンゴロウのクールなカッコ良さ。鈴木まもるさんが描くサンゴロウは、ほとんどは表情が見えないのですが、ふいに登場するサンゴロウの目の強さにドキッとさせられる場面も。
海に生きる黒ねこサンゴロウの冒険ファンタジー「黒ねこサンゴロウ」シリーズの最初のお話。ここから10巻にわたるサンゴロウのさまざまな出会いと冒険のお話がはじまります。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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