「あべ弘士の魔力で、雪の夜の森へ誘う」と、出版社の宣伝惹句にあるこの『しんしんゆきのふるばんに』を読むと、確かに作者であるあべさんの「魔力」を感じます。
「魔力」とは、作品の世界に引き込まれるというもの。
実はこの絵本の「魔力」は、すべてひらがなで書かれたタイトルから発揮しています。
まず、「しんしん」。擬態語といわれるオノマトペで、「ひっそりと静まりかえっているさま」を指す言葉です。
日本語の美しさを感じます。
これとよく似た言葉が、この絵本ではほかにもあります。
雪の降る夜の森を歩いている、一匹のきつね。その耳に聞こえてくる、「コンコンコン」という音。これもオノマトペです。
それはきつつきが木の幹をつつく音。
きつつきは電報を打っているところと話します。
このあと、きつねは飛び出してきたゆきうさぎや土の中から冬眠しているクマの寝言を聞いたりします。
静かだから聞こえてくる、さまざまな音。
いつの間にか、読者もきつねと一緒に雪の夜の森に、深くふかく入り込んでいます。
そういえば、「しんしん」を漢字で書くと、「深深」とか「森森」とかになるのだとか。