「わたし」が住むのは、ぎすぎすして、すさんだ街。
ほこりっぽく、なにも育たず、笑顔をみせるひともいない街。
ある晩、くらい通りで、おばあさんがもっているカバンをひったくろうとした「わたし」に、おばあさんはこう言った。
「おまえさんにやるよ。これを植えるってやくそくするんならね」
食べ物やお金のことしか頭になかった「わたし」は、ただカバンがほしかった。
カバンにそれが入っていると思って「やくそくするよ」と口だけで答えた。
それなのに・・・
カバンをあけてみると、入っていたのはドングリ! きれいな緑いろの、ぷっくりしたドングリがたくさん!
そのとき「わたし」のなかで何かが変わった――。
世界に注目されるイギリスのイラストレーター、ローラ・カーリンの、はじめての絵本作品。
文章はケンブリッジ大学でくじらやこうもりなど数々の動物を研究する、ニコラ・デイビス。
ふしあわせな顔をした人間ばかりのみじめでわびしい街のあいだから、ドングリの芽が顔をだし、緑がうまれ、そのいぶきが天までとどいてめぐみの雨がふってくると・・・。
灰色の街から、色あざやかな街へ。みるみるかわる、その劇的な変化を、ローラ・カーリンが、繊細かつかろやかな色彩で描いています。
あつまってきた小鳥たちの、なんてうつくしいこと!
「やくそく」は、手から手へ、つながっていきます。
自分たち人間以外の、いのちあるものをきれいだと思う瞬間、「しあわせ」ははじまるのかもしれません。
2011年ボローニャ・ラガツィ賞フィクションの部優秀賞を受賞した、注目のイラストレーターの絵をぜひ見てみてください。
そして、あなたの心にも、緑いろのドングリが芽吹きますように!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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