衝撃は絵本を開いた1ページ目から始まります。そこにいるのは、思いっきりお腹を出したまま立っている男の子。顔は何かで覆われていて見えません。
「ぼくのふくが ひっかかって ぬげなくなって、
もう どのくらい たったのかしら。」
……なんと。
その瞬間に全てを悟った読者は、もう感情が爆発したまま止められません。だって、だって。こんなの可愛い、かわいそう、でも可笑しい!
この男の子の言い分も聞いてみましょう。きっかけはおかあさんのせい。自分でぬごうとしてたのに、おかあさんが途中で手を出すから。その結果、こうなってしまったのだ! 彼は途方に暮れて思うのです。
「ぼくは このまま おとなに なるのかな。」
うんうんわかる、この絶望感。ああ、なんとかしてあげたい……全ての大人がそう思った次の瞬間、また新たな衝撃が走ります。彼はいったん今の状況の全てを受け入れて、このまま生きていこうと決意をするのです。
えっ!それって、どういうこと!?
さあ、ここからがヨシタケシンスケ作品の醍醐味です。転んでもただでは起きません。思わぬ方向に走り出し、終わりそうで終わらない、さらに笑いの追い打ちをかけられて。(ここまでハードルを上げてしまっても、やっぱり笑ってしまうのでご安心を)要するに、子どもの「愛らしさ」と「たくましさ」と「ユニークさ」を改めて見せつけてくれるのです。
それにしても、子どもって本当に忙しい。改めて応援してあげたくなっちゃいますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む