「まずしい 村には、ずっと 昔から おにが きた。」
天災や飢えや争い、死、悪いことが起きるとき、そこには鬼がいました。
少女「みね」のいる村も、鬼の恐ろしい姿が常に見え隠れしているような貧しい村でした。
ある冬、父ちゃんと母ちゃんが、みねに「おかめ」と「ひょっとこ」のお面を作ってくれます。それはみねにとって、はじめての自分だけの持ち物でした。
みねは成長し山奥の村へ嫁ぎますが、その村は生まれた村よりさらに貧しく、やはり鬼はやってきました。苦しいとき、みねは嫁入り道具にしのばせてきた、おかめとひょっとこの面をを取り出します。ひょっとこは父ちゃんの顔、おかめは母ちゃんの顔。一人眺めては笑い、つけて踊れば周りも笑顔になる、鬼もそんな場所からは逃げ出すのでした。そして、みねに、人生で1番大きな鬼と対峙するときがきて・・・。
5人の子どもを抱え、働いても働いても楽にならない暮らし。みねの人生は、苦労と困難に満ちていたように見えます。けれども、米寿を迎えたみねの表情と言葉に、私たちはハッとさせられます。
「私は日本一のしあわせ者だと思います。」
笑うこと、ひたすら前を向いて生きていくこと。人間の強さとは何なのか、日本を支えてきたたくさんの「みね」たちにも思いをはせたくなる、じっくり味わいたい絵本です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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