仏さまがアグラをかいた形のアグラ山。
そのふもとの、小さな池のほとりにすむのは…カエルのキダマッチ先生です。
キダマッチ先生は、どんな病気やけがでもあっという間になおしてくれるという、評判の名医です。
きょうはどんな患者がやってくるでしょうか。
足をひきずるアリンコじいさん、息がくるしいトカゲのおくさん、そして牧場で倒れた子ウシ…!?
小さな患者から大きな患者まで、キダマッチ先生は引き受けます。
カエルの姿に、名医らしい風格がにじむキダマッチ先生。
白衣は着ないけれど(なぜかというと背中のせっかくの水玉もようがかくれてしまうから)、患者のいうことを鵜呑みにしないし、良心的な値段で診てくれるし、サブタイトルにあるとおり“かんじゃにのまれる”ほど我が身が危なくてもちゃんと治療をしてくれるし…。
本当にいいお医者さんです!
そんなキダマッチ先生にも気になることがひとつ。それは、出て行ってしまった派手好きの奥さんのことですが…?
児童文学作家、今井恭子さんの初めての絵本シリーズ、第1作目。
岡本順さんの挿絵は繊細で生き生きしたタッチがすばらしく、生き物たちの姿や、診察室の中など、いつまでもながめていたくなります。
個人的には、先生が黒い医者かばんを頭にのせてすいすいと泳ぐ絵に、すっかり心を奪われてしまいました。なんてのびやかに、気持ちよさそうに描かれているのでしょう!
さて、気になる奥さんのその後は本書ではわかりません。シリーズははじまったばかりですから、きっと徐々にいろんな出来事が描かれていくのでしょうね。
はじめての1人読みにもぴったりのシリーズです。小さな名医、キダマッチ先生にご注目くださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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