その、最初のページ。
朝もやに浮かびあがる雄大な山の景色を目にした途端。
ひんやりした地面の空気を感じた瞬間。
物語を読む前から感覚的にそれは伝わってくるのです。
彼らは山に見守られている、ということ。
早起きの鳥は空へ飛び立ち、シロイワヤギがひづめの音を響かせ、小さなナキウサギが目を覚まし。つゆに濡れた草をそよがせて歩くのはヘラジカの親子。朝ごはんを探しているのです。
昼になれば、木洩れ日のさしこむ枝のあちこちで鳥たちがさえずり、クズリが獲物をもとめてうろつき、シカは立ち止まり。
やがて日が沈むころ、真っ赤に染まる山を背景に、忙しく動き回るのはビーバーやハイイログマ。寝床へもどっていくものがあれば、目を覚ます動物たちもいる。夜は夜で、また一日の世界がはじまっていき……。
刻一刻と変化していく陽の光、さらに夜になれば月の光に照らされる自然の風景が。毎日繰り返されているであろう、それぞれの動物たちのそれぞれのいとなみが。こんなにも美しく、こんなにも尊いものに見えてくるなんて! 揺さぶられるほどの感動を味いながら、最後に語るその言葉が静かに心に突き刺さってきます。
「夜が朝になるように、世界もかわっていく。
永遠に続くこともあれば、進化するものもある。
かわらないのは、生きること。」
山は、知っているのです。
消えいく命のことも、生まれ来る命のことも。
そして、見守られている私たちが考えるのは、これからの地球について。
リチャード・ジョーンズが描く美しい自然や愛らしい動物たちを素直にたっぷり堪能しながら、しっかりと感じたことを心に留めていこうと思うのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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