「ここは、おかあさんの ひざのうえです。」
今、ぼくがいるのは家の中。
そして、椅子にすわるおかあさんのひざの上。
ここは、まちのまんなかであり、公園の近くでもあり。
空の下でもあり、大地の上でもあり。
誰かにとっての「ここ」のはしっこでもあるけれど。
この広い宇宙の中、ぼくがいるのは「ここ」。
ここは、確かにぼくの「まんなか」なのです。
詩人・最果タヒさんが初めて手がけるこの絵本、読んでいるうちに呼び起こされるのは小さい頃の自分の記憶。それは確かな場所というよりも、自分の立っている絨毯の感触であったり、母親のワンピースの模様の一部であったり、窓から遠く見える遊ぶ子どもたちの走る姿であったりと断片的。だけど、そこがかけがえのない場所であったという感覚はしっかりと思い出すのです。
今、子どもたちがこの絵本を読めば、さらにその場所がこんなに楽しい世界に包まれているということを知るのです。絵を担当している及川賢治さんが枝葉を広げていくように丁寧に描くのは、「ここにいるぼく」を取り巻く近くて知らない景色や仕組み、あちらこちらで起こっている大きくて小さな出来事。その視点がどれだけ世界を広げ、心を穏やかにしてくれるでしょう。
子どもから大人まで、あらゆる人たちにとっての「大切な一冊」となることを予感させてくれる絵本。私も繰り返し読んでいこうと思います。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む