子どもの頃に、「男の子なら男の子らしく」とか「女のでしょ、女の子らしくしないと」と言われたことはないでしょうか。
考えてみると、この「らしく」という言葉、なんとなく強制を強いるように聞こえます。
そもそも、「男の子らしく」とはどういう子どもをいうのでしょう。
元気いっぱい外を走り回る子どもでしょうか。
では、「女の子らしく」は、お人形遊びしているような子どもでしょうか。
この「らしく」という言葉のせいで、個性を生かしきれないまま育った人もたくさんいるような気がします。
では、牛の場合はどうでしょう。
「牛らしい」というのはどんな牛でしょうか。
「あたまをふりたて、じめんをけちらかして、あばれまわる」、そんな牛。
もっとも、そんな牛は闘牛用の牛ですが。
原作が1936年という、もうりっぱな古典のこの絵本の主人公の牛「ふぇるじなんど」は、そんな牛ではありませんでした。
花が好きな、おとなしい牛でした。
ところが、牛買いたちがやってきた日、「ふぇるじなんど」は蜂に刺されて、大暴れ。
それを見た牛買いたちは、「牛らしい」牛を見つけたと大喜びします。
やがて、闘牛場に連れてこられた「ふぇるじなんど」ですが、さて闘えるのでしょうか。
こういう素敵な絵本が昔からありながら、やっぱり「男の子らしく」とか「女の子らしく」と育てられてきました。
花が好きな牛だって、幸せに暮らせることを「ふぇるじなんど」がもうずっと前から教えてくれていたのに。