声なきモノの声が聞こえる心優しき泥棒
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投稿日:2015/09/30 |
どろぼうのどろぼんは、人々がその存在さえ忘れてしまったモノの声が聞こえます。その声に導かれて、そのモノを盗み出すのですが、盗まれた人もまったくそのモノの存在を忘れているので、盗まれたことさえ気が付きません。
そんなどろぼんがある雨の日、刑事であるぼくと出会います。
その出会いのシーンもとても美しい文章で綴られています。「あじさいの小さな花びらのひとつひとつに雨つぶが包まれるように当たって、そのささやかな音がたくさん集まってつめたい空気をふるわせていた。あじさいにはじかれた雨つぶは、さらに小さくくだけて紫色の煙幕になり、むせかえるようにあたりをかすませていた。それがどろぼんと、ぼくの出会いだった。」p6
それから始まる取り調べで、どろぼんの不思議な不思議な体験を聞くことになります。そのお話は、読む者をもぐいぐい引き込んで魅了していきます。
どろぼんは、ある夏の夜に出会ったものとの関係を築く中で、モノの声を聞く力を失っていくのですが、どろぼんがそこで自分の生き方をみつめなおしていくあたりも、じんわりと心に響いてきます。
詩人の斉藤倫さんの美しい文章が、ふんわりと、「子どもというには年をとりすぎているけど、おじいさんというには若すぎる。背はのっぽというには低すぎるけど、ちびというには高すぎる」という特徴のないどろぼんのように、私たちを包み込み、読後は優しい気持ちになることができました。
2015年の小学館児童出版文化賞を受賞したこの作品が多くの子どもたち、大人たちに読まれることを願っています。
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このような先生たちに出会えた子は幸せ
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投稿日:2015/09/30 |
ユダヤ系ポーランド人で医者であり、教育者であったヤヌシュ・コルチャックと、彼がその生涯を捧げた「孤児たちの家」の子どもたちとの生活を描いたノンフィクション・ノベルです。
「かけこみ所」と呼ばれる孤児収容施設で虐待により足の骨を骨折した後、コルチャック先生のもとで生活を始めるヤネクという少年の目を通して、コルチャック先生の教育方針、つまり子どもたちの権利を尊重し、ひとりひとりの特質を見抜き、的確なアドバイスを与えて伸ばしていく、そのような「孤児たちの家」での様子を描きます。子どもたちはお互いの存在を認め、許し合い、信頼関係を築いていきます。
それはまさに、2015年8月に出版された『暴力は絶対だめ!』(アストリッド・リンドグレーン 石井登志子訳 岩波書店)でリンドグレーンが訴えた子どもを人格のあるものとして愛するという教育、体罰によらない教育、大人が子どもを信頼し、自ら規範をしめす教育を具現化したものでした。
この物語は第二次世界大戦勃発の前の「孤児たちの家」の様子を描いて終わっています。その後、ナチス・ドイツによってコルチャック先生と子どもたちはワルシャワ・ゲットーに移され、自分だけは恩赦を受けられる機会があったのにコルチャック先生は子どもたちと共に強制収容所に行き、共にガス室で虐殺されてしまいます。この本は、多くのことを私たちに投げかけてくれています。小学校高学年くらいから読める作品です。なお、著者の前作『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』(母袋夏生/訳 岩波書店 2011)と共に子どもたちに手渡してほしいと思います。
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生きてる時に伝えて欲しい
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投稿日:2015/09/03 |
実際に親が亡くなった子どもには辛い絵本です。私はつい最近連れ合いを天国に見送りました。家族を亡くすというのは本当に辛いです。
高校生でも親を亡くすとしばらくはPTSDで立ち直れません。
それをこんなに軽く扱われるのはとてもしんどいです。
幼児であれば、それはもっともっとです。
周囲から大人が見ている以上にどれほどの思いを抱えているか・・・
そこへの相続力が欠如しています。
これを読んで涙した、感動したというのは
親のほうなのかもしれません。
死んで後悔するくらいなら、今我が子に好きだと言っておこうという・・・
でもこれは親を亡くした子には辛いとしか言い様がない
なぜこの絵本を絶賛するのか・・・理解に苦しみます。
時間を越えて乗り越えていくものを、このように軽く扱ってはならないと思います
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真実を描く
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投稿日:2015/09/02 |
2015年8月末に山梨は白州にある薮内正幸美術館に行ってきました。
薮内正幸氏のご長男である竜太さん(美術館の館長)に、薮内氏の絵について詳しくお話を伺いました。
たとえばライオンのおかあさんの足に浮き出ている血管。
動物園の獣医さんがこの絵を見て唸るそうです。
ライオンの写真でもなかなかこの部分の血管が写っているものにはお目にかかれない。でもライオンに注射をする機会のある獣医であれば、どこに静脈が浮き出ているかはわかっていて、この絵を見た途端、その正確さに感嘆されたというのです。
チンパンジーのおかあさんの腕の毛の生え方も上腕と腕の先では逆になっている。これもチンパンジーの生態をきちんと把握して、丁寧に描いている。
この絵本は一見地味な絵本なのですが、うちの4人の子どもたちも大好きでしたし、25年続けている文庫活動でも小さな子どもたちがとても喜ぶ絵本です。
小さな子どもたちにはそういう細部はわからなくても、本物をきちんと見せたいという薮内さんの姿勢が、子どもたちの心を捉えるのでないかと思いました。
丁寧に作られた絵本がロングセラーとして残っていっていることも嬉しいと思う絵本です。
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焦点はどこに?
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投稿日:2014/09/18 |
ニひきのまものがりっぱなまものになろうと、修行の旅へと出かけていきます。
その修行とは、とくかく悪行を重ねることです。この「悪行」という言葉、読んでもらった子は「?」とならないでしょうか?それとも今は戦隊モノなどのTV番組を見ているから、すんなりと入っていくのでしょうか?
しかしこの二ひき、優しいところがあると絵本では言っています。人間に出くわした時、自分から襲うことはなかったものの、人間が銃を打ってきたら我を忘れ、襲いかかり、赤ちゃん連れの両親を殺してしまう。しかし赤ちゃんのことは哀れで、育てることにします。
その後、人間がくま狩りをしているところに出くわし、人間が母ぐまを殺そうとしているのを見て、凶暴性を発揮、人間を襲います。しかし、連れていた赤ん坊が人間が撃った玉にあたって死んでしまいます。そのあとの魔性ぶりは、すごく残酷なシーンでありながら、絵から伝わってくるものがなく、のっぺりとした感じしかしません。
後半は、母ぐまを殺されてしまったこぐまを育てる二ひきのまもの。
しかし、「まもの」であることと、赤ちゃんや、こぐまを救って育てるという二律背反な性質の描き方が、中途半端で、この絵本は何をテーマに、誰に読んでもらおうとして描かれ、編集されているのか、焦点がぼやけてしまっており、読後感はとても「ザラリ」としていました。
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帯に短し襷に長し
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投稿日:2014/07/18 |
ここのところ「図書館を使った調べる学習」が公共図書館や学校を含めて盛んになってきています。
一方で、パソコンはなくてもスマートフォンなど携帯端末があれば、いつでもどこでもインターネットを使って調べることができるために、書籍で裏の取れた情報で調べるという経験が、大人も子どもも少なくなっているのも実情。
そのような中で、お子さんが「お父さん、○○ってなあに?」など、質問をしてきたら、一緒に図書館へ行って調べよう!という、この本のコンセプトはとても素晴らしいと思います。
2014年春に発表された平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」で、「平成25年度全国学力・学習状況調査の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)によると、子どもの成績に、幼少期の絵本の読み聞かせなどの読書活動と、親子で図書館を利用した経験が影響を与えることがわかりました。
なので、ぜひぜひ図書館で親子で調べる学習をしてほしい。その初心者へのガイドブックとしては良いと思いますが、内容的には同じ作者の『調べ学習の基礎の基礎』(ポプラ社)のほうが、「なぜ本なのか?」ということがよくわかり、まとめ方まで丁寧でわかりやすいので、敢えてこちらの本をすすめる気にはなれません。
また大学図書館を「学術機関」と呼ぶのは納得出来ますが、公共を含めて図書館全体を「学術機関です」と言明するのは、図書館学的にも無理があると思います。(教育機関ではありますが)
なので、星3つにとどめました。
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Simple
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投稿日:2013/11/18 |
先日、長田弘さんと山村浩二さんの対談をクレヨンハウスで伺いました。
とてもシンプルなことばと絵なのですが、ほんとうに豊かな表情があり、鏡のように子どもたちの表情もいっしょに動く・・・その表情を見て、読み手もまた嬉しくなる、そんな絵本です。
ことばも絵もシンプルなのですが、その分装丁にはかなり時間をかけているとのこと。装丁は祖父江慎さん。文字は、「ん」独自のフォントを使用しており、文字もまた表情豊かです。
紙も、白い色も、何度も何度も試し刷りをして選ばれたもの。手に取るとその良さが伝わってきます。
なによりも、子どもたちが絵と対話する・・・そしてイマジネーションを広げてくれる。余白のある絵本とは、そこに子どもたちの想像を広げる余地があるということ。
こうした時間をかけ、丁寧に作られた絵本がきちんと評価されてほしいと願います。
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自分の子ども時代にもどれる絵本
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投稿日:2013/09/26 |
「ぐりとぐら」誕生50周年、おめでとうございます。
この絵本は私自身が3歳の時にリアルタイムで母に読んでもらった絵本です。おおきなたまご、そしておおきなカステラ、たまごのカラで作った車。
読んでもらっているうちに、この絵本の中にすっぽりと入り込み、一緒になってカステラをわけてもらった気分になりました。それはそれは心躍る体験でした。
母の声とともに、鮮明に記憶しています。
その記憶があったので、家庭文庫活動を25年も続けてくることができました。
その後、4人の子どもたちにもそれぞれ読みました。男の子も女の子も「ぐりとぐら」は大好きでした。「ぼくらのなまえはぐりとぐら・・・このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること」兄弟姉妹4人が声を揃えて唱えたものでした。
いずれ孫ができれば、やっぱり「「ぐりとぐら」は読んであげたいな。7冊全部すでに持っているけれど、まだ見ぬ未来の孫のために、今回また7冊セットを買っておきたいと思います。
「ぐりとぐら」は、私の心の中に大切な大切な種を蒔いてくれた大事な絵本です。
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ブラティスラヴァ世界絵本原画展金のりんご賞
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投稿日:2013/09/09 |
この絵本に出会ったのは、絵本好き仲間が全国から結集した3月のこと。
その後、高円寺の「えほんやるすばんするかいしゃ」で原画展を見て、きくちちきさんご本人にも会い、ますますその伸びやかな筆致に惹かれました。
そして世界もそれを認めたのですね。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展で金のりんご賞を受賞としたのニュース。
素直で優しい気持ちになれる絵本です。小さな子どもも大人も楽しめる美しくもやさしい絵本です。
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読みが表面的・・・
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投稿日:2013/08/30 |
人とは違うということを認めてほしい
人と違っていてもいいいんだよ。
みんな違ってみんないい・・・そういうメッセージなのですが、どうしてもひっかかります。
あかねこは新しい家族ができて幸せになったけれど、自分の親や兄弟との関係をきちんと結びなおしていない。
家出してしまったまま・・・
親子の断裂がそのまま。読後感がとても悪いのです。
この絵本はソング絵本になっており、歌だけ聞いていると、なんだかほろりとするのですが、絵本では違和感が残ります。
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