主人公のツイグリーさんは、木の上で暮らしています。
相棒は「ニャンコ」という名前の犬です。
木の上の家には、テレビもソファーもあり、毎日自分たちの好きなことだけして、楽しく幸せに暮らしていました。
たまに友達のクマたちも呼んで、一緒に遊んだりもしますが、突然町の人が、木の上の家にツイグリーさんを訪ねてくると、ツイグリーさんは隠れてしまいます。
「ひとがきらい、って わけじゃないのよ。ただ、きのうえで くらしていると、ちょっとだけ ひとに あうのが にがてになるの」
人に会うのが苦手なツイグリーさんの代わりに、町へ買い物に行くのは賢い犬のニャンコです。
町の人たちは、木の上に住むなんてとんでもないと思っていました。
その中でも一番よく思っていなかったのは、市長の奥さんでした。
そんなある日、町に嵐がやってきました。
雨が何日何日も降り続き、橋は流され、町中が海のようになってしまいました。
しかし町が大洪水になっても、ツイグリーさんの木の家だけは、流されずにそびえ立っていたのです!
町の人たちがツイグリーさんが木の上に住んでいて本当に良かったと思い直すのと同時に、ツイグリーさんもまた、大切なことに気がつきます。
いざという時は、何をしたいかしたくないかなんて、関係がない!
大変な時は、人に会うのが苦手だなんて言ってないで、何が何でも助ける、ということ。
ツイグリーさんは、
「もうすぐ、おきゃくさんが たくさんくるわ。」
ニャンコやクマたちも手伝って、お茶の準備や、大きな鍋でシチューを作る準備を始めました。
すると、次々に、びしょ濡れになった町の人たちが避難してきて・・・・
初版は1966年。
以来、世代を超えアメリカで50年以上愛され続けている絵本が、今回初めて翻訳されました。
主人公のツイグリーさんは「小枝さん」と言う意味。
人を避けるように、「木の上」という世間から隔絶された、自分の世界の中で生きていますが、洪水に見舞われた町の人たちを、全力で助けようとします。
災害の日を描いているのに、なんだか皆とても楽しそう。読者もツイグリーさんのシチューを一緒に食べたかのように、身も心も温かい気持ちになっていきます。
50年以上前の絵本とは思えない、全く色あせない魅力を放つ今作。「個人」というものを尊重することの大切さ、同時に、人と人とが助け合うことの大事さを描いている、現代にこそ読みたい絵本です。
(福田亜紀子 元絵本編集者)
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