なぜ「おはぎ」を題材にした絵本を描こうと思ったのかとよく聞かれるのですが、実は、前作、前々作が夏の絵本だったので、今度は季節を変えて秋の絵本を作りたいと思い、「秋」で一番に連想したのが「おはぎ」だった、という現実的な理由からです。
まず、「おはぎちゃん」というキャラクターを考えました。そのとき、おはぎが話したり歩いている姿が想像できなかったので、赤ちゃんにすることにしました。そして、前作「もぐてんさん」で場面のはじっこに描いたカナヘビを気に入っていたので、おはぎちゃんの育ての親になってもらい、また、和菓子であるおはぎちゃんが、そこに存在するためには、人間との関わりが必要なので、舞台を老夫婦の庭に決めたのです。
設定を決めると、自然にお話しが進み始めました。うっかりもののおじいさんと、おおざっぱな性格のおばあさんの庭で、カナヘビ夫婦を中心にいろんな生き物たちから、とびきりの愛情を受けてすくすく育つおはぎちゃん。おすわりをしてハイハイをして、かなりだいたんに庭の中で遊んでいるけど、老夫婦は全く気がつきません。それに、おじいさんのうっかりのおかげで庭の生き物さえ知らないような、もっとすごいことが起こっています。私はいつか、老夫婦がこの事実に気がつく時が来ると思っています。その時どんなに驚いて、その先どんな暮らしが始まるのか、とても楽しみです。
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