ある学校へ転校してきた、主人公の始(はじめ)。
ところが、不思議なものが見え始めます。それは、「びりっかす」さん。
母親に「がんばらなくていい」と言われた始は、新しい学校では、
テストでもリレーでも、がんばらないことにします。そしてそれは、
クラスで「ビリ」になって、「びりっかす」さんに会うためでもありました。
誰だって、ビリになんかなりたいはずがありません。
けれども、進んでビリになりたがる始の姿は、とても奇妙なんですよね。
始のその理由は、いつしかクラスの子に知られることとなり、
ビリになるたがる子が増えてきて・・・
がんばってビリになることと、わざとビリになることって、全然意味が違う!
って改めて気付かされます。作者はこう書いています。
「びりになるのは、その気さえあれば、一番になるほど難しいことではありません。だれでも、なれます。」
その通り!と叫ばずにはいられません。
わざとビリになることは容易いけれど、わざと一番になることは容易ではないのです。
やがて、「がんばらないことは、がんばっている子に失礼なのでは?」という
感情が生まれ、子どもたちの心に葛藤が始まります。
どこにでもいるような小学生、等身大の子ども達の考え方や感情が
自然に表現されていて、いつのまにか自然にストーリーの中へ
引き込まれてしまいました。
成績で席順を替えさせていた教師。それは、一番を決める行為であり、
ビリを決める行為でもあるんですよね。
競争することが悪いこととは言わないけれど・・・
いろいろ考えさせられる一冊となりました。
是非、現役の小学生に読ませたい一冊です。