
【連載】11月の新刊&オススメ絵本〜大人にもオススメ英語絵本&児童書〜

●はじめての英語にオススメ! 新刊英語絵本
小さいお子さんから楽しめる英語絵本が11月にはたくさん出版されました。中には”あの”名作が英訳で登場するなど、話題性もバツグン! 英語に苦手意識のある大人の方も、絵本から英語に触れてみるのも良いかもしれませんね。
★新刊★めくって楽しい! 英語でしかけ絵本。
英語を身に付けるならやっぱり単語力! でも、興味がないものはなかなか覚えられませんよね。子どもたちが大好きな海や陸の生き物が101も登場します。しかも、日本語と英語で紹介されているので、どちらも覚えることができる優れものです。
★新刊★体を動かしながら英語レッスン?!
『はらぺこあおむし』でおなじみ、エリック・カールの人気絵本、『できるかな? あたまからつまさきまで』が、英語と日本語で楽しめるる2か国語版になりました!
動物たちと子どもたちの「Can you do it? (きみは できるかな?)」「I can do it!(できるよ できるよ)」というやり取りは、体を動かしながら、何度も繰り返したくなっちゃう面白さ!
日本語も載っているので、「くるくる くるるん」や「くい くい くい くい」といったオノマトペは、日本語オリジナルなんだと発見があるのも楽しいですね。
「英語でもよめる できるかな? あたまからつまさきまで」
作:エリック・カール
訳:くどう なおこ
出版社:偕成社
ペンギン、きりん、さる、わに。絵本の中の動物たちの動きに合わせて、いっしょに体をのばしたり、手をたたいたり、足をふみならしたり……。
ゆかいなまねっこ遊びの絵本が、英語と日本語で楽しめる2か国語版になりました。動物名や体の部位、まげる・ゆする・たたく・けるなどの動作をあらわす基本的な英単語、「できるかな?」「できるよ」の会話などがしぜんに身につきます。絵本を見ながら体を動かせるので、小さな子どもも大人も、室内でも屋外でも、楽しめます!
『はらぺこあおむし』でおなじみのエリック・カール作。
★新刊★あの名作絵本が英語で楽しめる。
「Heartbloom Hill」。言葉だけ聞いても、作品名がするっと出てくる人は少ないと思います。でも、こちらを見つめる少女の印象的な切り絵の表紙を見たら、誰もがあの絵本を思い出すことでしょう。
1970年に出版された名作『花さき山』が50周年を迎える今、英語絵本として誕生しました。翻訳を担当したのは、ご自身も絵本の文を多数手がける、詩人で絵本作家のアーサー・ビナードさん。
『花さき山』が英語でどのように表現されているのか、ぜひご自身の目で確かめてください。
「花さき山」
作:斎藤 隆介
絵:滝平 二郎
出版社:岩崎書店
山菜をとりにいって,山ンばに出会ったあや。やさしいことをすると美しい花がひとつ咲くという花さき山の感動のものがたり。心にのこる名作絵本です。

巻末には斎藤隆介さんの日本語文が収録されています。
●しっとり読みたい、大人のための翻訳絵本
子どもはもちろん、学生や大人にも楽しんでほしい、翻訳絵本の新刊をご紹介します。
秋も深まる季節、あたたかい飲み物の傍らに絵本を置いて、静かな夜を堪能してください。
★新刊★時代を超えた大作家の競演に酔いしれたい!
『赤ずきんちゃん』といえば、小さい子向けのソフトカバータイプの絵本から、日本の人気作家さんが絵を描いたシリーズまでたくさんの種類が出版されています。
でも、ちょっと大人な気分を味わいたいのであれば、この『RED RIDING HOOD 赤ずきん』がイチオシです。
文章を書いたのは『ピーターラビットのおはなし』で有名なビアトリクス・ポター。絵は『きょうは みんなでクマがりだ』や『あかちゃんがやってくる』のヘレン・オクセンバリー。そして翻訳を角野栄子さんが担当しているなんて! 豪華共演すぎるのではないでしょうか?(ちなみに、角野さんの方がヘレン・オクセンバリーより3歳お姉さんです)
絵本好き、文学好きな方にも一見の価値がある作品だと思います。
★新刊★美しい絵と共に追体験するアンデルセンの人生。
作品は読んでいても、その作品を書いた人の人生を知る機会は、なかなかはありませんよね。もし『みにくいアヒルの子』『雪の女王』など、今も子どもたちに読み継がれている名作童話を生み出した作家の話を聞く機会があったら……誰もが知りたいと思うのではないでしょうか?
スロベニアの画家・マーヤ・カステリックが描き出す繊細で美しい世界は、まるでアンデルセンの童話の世界そのものの様。コマ割りと1枚絵で組まれた装丁は、はじめての人でもとても読みやすいと感じることでしょう。
偉人伝やマンガで描かれた伝記とは一味違った、アートな伝記絵本を体感してみてください。
「アンデルセンの夢の旅」
著:ハインツ・ヤーニッシュ
絵:マーヤ・カステリック
訳:天沼 春樹
出版社:西村書店
「なにかお話を聞かせて!」馬車に乗り合わせた少女にせがまれ、男の人はとっておきの話をはじめました。まずしい靴屋の息子のハンスが、たった一人でコペンハーゲンに旅立つ話です。歌ったり、おしばいをしたいというハンスの夢は途中で挫折しましたが、苦労のすえ、お話を書くことで、ついに自分の王国を手に入れました。この少年こそ、人々の心に残る童話をたくさん書いたハンス・クリスチャン・アンデルセンだったのです。
『空とぶトランク』や『親指姫』『みにくいアヒルの子』『はだかの王様』『雪の女王』など、アンデルセン童話の名場面をたくみに織り込んだ伝記絵本。
「わたしの人生は、ひとつのすばらしいメルヘンでした」
*有名な児童文学や、その登場人物などもこっそり描き込まれています。ぜひさがしてみてください。
★新刊★オニババとの対峙は迫力満点!
少年僧・ニマが水を求めて、恐ろしいおにばばと対峙する昔話。この絵本を手に取った人の多くが、この物語は昔から語り継がれてきた話だと思うことでしょう。実は、このお話、作者のピエール・ベルトランによる完全なオリジナル創作昔話なのです。ピエール・ベルトランはこの物語を作るために、実際にヒマラヤの村に滞在し、ネパールの民話や、世界各国で語り継がれている昔話を収集し、この物語を生み出したのだそうです。
『ウェン王子とトラ』のチェン・ジャンホンが描く、緻密で力強い絵と共に必読の一冊です。
「ニマと おにばば」
作:ピエール・ベルトラン
絵:チェン・ジャンホン
訳:平岡 敦
出版社:徳間書店
シュッ、シャ…。
ぶきみな音で目がさめたニマ。
台所にそっと近づき、のぞいてみると…?
勇気を出しておにばばと戦い、お寺をすくった少年僧を描く、ヒマラヤを舞台にした心に迫る物語。
昔、ニマという男の子が、高い山のつらなるヒマラヤのお寺で修行していました。
ある日、大切な井戸の水がかれ、ニマは歩いて一日かかる泉まで、水をくみにいくことに。
和尚さまはニマに、泉のそばでは旅人を食うおにばばが出るから気をつけるように、といいます。
そしてニマは、何かあったら思い出しなさい、と和尚さまが言った仏の言葉を胸に、旅に出て…?
★新刊★ノーベル文学賞作家による、魂の絵本。
年の瀬に向けて、職場や家庭などで忙しさを感じはじめる季節。忙しなさばかりに気持ちを向けて、気分の心が置いてけぼりになっていることはありませんか? そんな忙しい日々を過ごす大人たちへ、ノーベル文学賞受賞作家オルガ・トカルチュクから、絵本の贈るものが届きました。
ときにはお気に入りの飲み物を手に、一息ついてみてはいかが?
「迷子の魂」
著:オルガ・トカルチュク ヨアンナ・コンセホ
訳:小椋 彩
出版社:岩波書店
あるところに、忙しすぎて魂をなくしてしまった男がいた。男は医師の助言にしたがい、迷子になった魂をじっと待つことにする。すると??。ノーベル文学賞作家トカルチュクが、コンセホのノスタルジックな絵とともに贈る、子どもたちと、忙しい大人たちのための、大切な魂のものがたり。2018年ボローニャ・ラガッツィ賞受賞作。
★新刊★時代を切り開いたある女性の物語。
今では当たり前なことも、ほんの少し前までは非常識だった……歴史を紐解いていくと、そんな過去を知ることは多いですよね。例えば、女性には選挙権はなかった。子どものための本はなかった……など。1960年代のアメリカでは、肌の色で人を区別する法律があったのだそうです。そんな中、立ち上がった一人の女性。彼女は日系アメリカ人の絵本作家・ギョウ・フジカワでした。
ギョウ・フジカワが絵本の中から発信した「みんなに、差別のない世界を想像してほしい」というメッセージとは……? 続きは絵本を読んでみてくださいね。
●11月のオススメ児童文学はコチラ!
●「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズの作家が贈る、新シリーズ!
最初にご紹介する児童書は、「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」や、「十年屋」、「怪奇漢方桃印」など、多種多様なシリーズを一手に手掛ける廣嶋玲子さんの新シリーズです。
今回の舞台は町のいたるところに猫がいる「猫町」(本当の名前は「大根古町」。ここに暮らす小学4年生の少年・遠矢に降りかかる不思議な出来事とは……。
「猫が大好き!」という廣嶋玲子さんも大満足の、ねこがたくさん出てくるお話です。
「猫町ふしぎ事件簿 猫神さまはお怒りです」
著:廣嶋 玲子
絵:森野 きこり
出版社:童心社
ここはとある日本の町、「大根古(おおねこ)町」。ある日、小学4年生の遠矢は幼なじみ・真理恵のたのみをことわれず、オンボロ屋敷のふしぎな猫じゃらしをとってしまう。実はその猫じゃらしは、街の猫たちが大切に大切に育ててきた、特別な猫じゃらしだったのだ…。その夜、「つかまえたよ。さあ“おまざりさま”のところにいこう」とまっ黒な大猫が遠矢を連れにやってきた!町の猫たちが崇める「猫神“おまざりさま“」のさばきの前に引っ立てられた遠矢は、猫じゃらしを盗んだことをつぐなえ、と言い渡される。「おまざりさま」が気に入るであろう、「3つのおくりもの」を持ってくれば、ゆるしてくれるという。「おまざりさま」の呪いによって猫になった遠矢は、個性的な猫たちに助けられながら「3つのおくりもの」探しに奮闘する。そして、猫たちにとって価値のあるおくりものとは何なのかを知っていく……。
★新刊★人形つかいと人形たちの友情の物語。
日本人にとって「人形劇」というとあまり馴染みの薄いように感じてしまうかもしれません。でもだからこそ、物語に登場する人形劇は、異国情緒溢れる姿をしていて、ファンタジー世界への入り口のように感じられるのかもしれません。
ドイツ・アカデミー児童文学大賞も受賞している「おとぎ話の名手」ラフィク・シャミが見せてくれるのは、人形劇の人形たちとその遣い手の人形つかいによる友情の物語です。
田中鮎子さんの描く挿絵がとても美しく、私たちを物語の世界に誘ってくれることでしょう。
「人形つかいマリオのお話」
著:ラフィク・シャミ
絵:たなか鮎子
訳:松永 美穂
出版社:徳間書店
「おとぎ話の名手」として知られるラフィク・シャミが贈る
人形つかいとあやつり人形たちの友情の物語。
「もう、糸につながれているのはいや!」
ハサミで糸を切ってしまったあやつり人形たちがはじめたことは……?
人形つかいのマリオは、あやつり人形たちといっしょに国じゅうを旅して、自分で作ったお話を、人形劇として演じていました。
でも、マリオが人気者になり、同じ芝居を何百回もくり返すようになると、人形たちはうんざりしてきました。
ある晩、王妃役の人形が、ハサミで自分の糸を切ってしまい…?
「物語の名手」として知られるシャミが贈る、人形つかいと人形たちの友情の物語。
人形劇のストーリーとして作中で語られるおとぎ話も楽しい。
挿絵多数。
話題のおはなしや新しい物語も良いですが、しっとりと名作・昔から読まれてきた物語を読むのもやっぱりいいですよね。次に紹介する2作品は、小学校1、2年生からの一人読みにピッタリ。挿絵もふんだんに入っていて、おはなしも楽しいものばかりです。
●アンガスの家の靴下が売れるようになったのは、スズメのおかげ?
●翻訳家・小宮由さんオススメの幼年童話。
「きょうはかぜでおやすみ」
文:パトリシア・マクラクラン
絵:ウィリアム・ペン・デュボア
訳:小宮 由
出版社:大日本図書
「パパ、あたまが ふくつうで、のどは ずつうが する。」
エミリーがフレドリックと名付けたお気に入りの毛布を引きずりながら、パパの部屋に入ってきました。
おでこが熱く、どうやら風邪らしいエミリー。
パパは体温計をあちこちさがし回りますが、なかなか見つかりません。
一方、ベッドに寝かされたエミリーは、髪をポニーテールにしてとか、ロマンチックなお話をしてとか、パパに色々なお願いをしますが……?
冒頭からあっという間にエミリーとパパのやりとりにひきこまれます。
文も絵も終始ユーモアにあふれ、「かぜで お休みするって、ほんとに たのしい!」「とくに、パパといっしょだとね!」なんてエミリーがごきげんなのも納得です。
そして個人的には……意外と元気な子どもをもてあましながら一日つきあうパパの姿に、親近感をおぼえたり癒されたりしちゃいます。
文章は、ニューベリー賞を受賞した名作『のっぽのサラ』をはじめ、簡潔であたたかい作風に定評があるパトリシア・マクラクラン。
絵は、『二十一の気球』で同じくニューベリー賞を受賞し、イラストレーターとしても活躍したウィリアム・ペン・デュポア。
生き生きとした子どもらしさがかがやく作品世界は、きっとこの二人の作家ならでは。
3・4・5歳くらいのお子さんとぜひじっくり読んでみてくださいね。
もちろん小学生低学年の一人読みにもおすすめです。
ちょっぴり具合はわるいけど、ベッドで過ごす父娘コンビにとって幸福感漂う一日。
翌日の「オチ」もちゃんとある楽しいお話絵本です。
翻訳家・小宮由さんがえらぶ、すぐれた幼年童話「こころのほんばこ」シリーズ第4弾です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
翻訳家・小宮由がえらぶ、今、子どもに読ませたい質のよい幼年童話シリーズ