
【連載】5月の注目の新刊&オススメ絵本紹介 〜おはなし絵本編A〜

お友だちや周りの環境が新しくなり、楽しみつつもちょっぴりお疲れモードに入るのも5月の特徴。絵本の中の友だち関係に共感したり、日常から離れて楽しい気持ちになれるユーモア絵本を集めました。みんなで読んでも、一人で読んでもOK! お好きな楽しみ方で絵本を味わってください。
●友だちを大切にする気持ちを育む絵本5選。
5月になり、友だち関係で新しい出会いや悩みを持つお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか。そんなお子さんのそばにそっと寄り添ってくれるような、オススメ絵本をご紹介します。
●ぬいぐるみを通して、成長を感じる作品。
小さい頃からお気に入りのぬいぐるみを大切にしているお子さんにはこちらの絵本がオススメ。自分より大きかったぬいぐるみが、ある時、小さくなっていることに気づいた少年。それは、ぬいぐるみが小さくなったのではなく、自身が大きく成長したということ。嬉しさと共にちょっぴり寂しさも感じる、さわやかな成長の物語です。
●友だちと一緒なら、飛び出していける!
子どもとぬいぐるみの友情の次は、モルモットと毛玉の友情のおはなしです。臆病な性格のモルモット「ちゃも」を励ますのは、ちゃもの抜け毛から生まれたほわほわな「けだまーず」。「けだまーず」に励まされて、外の世界へ出るきっかけをつかむ、ちゃも。
作者のなかやみわさんは、10年以上に渡り、モルモットを飼っていて、いつかモルモットを主人公にしたおはなしを描きたいと思い続けていたのだそう。
ちゃもとけだまーずの頑張りを通して、新しいことにチャレンジする勇気をもらえる作品です。
●ケンカして、仲直りして…深まる友情。
友だちだからこそ、ときにはケンカをしてしまうこともありますよね。大切なのはケンカをした後、どうやって仲直りするか……それって、大人も同じかもしれません。
登場人物の繊細な心の機微を、小さい子どもにも分かりやすい文章で描く作家のかさいまりさんと、大胆なタッチで子どもの表情や仕草を描き出す北村裕花さんがタッグを組むと、小学生男子のケンカがこんなにもリアルに、共感を持って読者に届くのかと感動すら覚えます。
友達とケンカをして悩んでいる、全ての子どもたちにそっと手渡してほしい一冊です。
「かしたつもり×もらったつもり」
作:かさい まり
絵:北村 裕花
出版社:くもん出版
大切なきょうりゅうずかんを、れんは、友だちのだいちに貸したつもりだった。
だけど、だいちはもらったつもりだった。
勘違いの原因は、大きな工事現場の音。
聞き間違い、勘違いからはじまる男子のけんかと仲直りの物語。
こんなことってアルアルな状況。読者の子どもたちが、自分の気持ちも振り返って考えるきっかけになる絵本です。
●ある日、ゾウがやって来たら、友だちになれますか?
どんな相手でも一瞬にして仲良くなってしまう。それは子どもの特権であり、大人にはない才能のように思います。でも、実際は相手に合わせたり、自分の考えを主張したりと、子ども同士、調整しあっているのかもしれません。
保育園に突然ゾウが友だちになりたいとやってくる絵本『ゾウのともだち フンパーディンク』の子どもたちも、最初は自分たちの遊びの中に、フンパーディンクを誘いますが、それでは楽しめないと、遊びの中で気づきます。では、どうすればフンパーディンクも自分たちも楽しむことができるのでしょうか……。
既成概念にとらわれない柔軟な発想と行動力を持つことが、友だち作りに大切だということを、幅広い年代に教えてくれる作品です。
●フンコロガシから学ぶ、自己肯定の育み方。
「子どもの自己肯定感を高め、前向きに生きられる子を育てましょう」。育児書や教育書などで多く語られるフレーズです。でも、実際にどういう言葉がけや対応をすれば、自己肯定感は高まるのか……悩むパパママもいらっしゃるのでは?
まずは難しく考えず、このフンコロガシから学んでみてはいかがでしょう?
糞を転がすことをやめる宣言をしたフンコロガシ。なんともユニークで脱力してしまうおはなし。でも、読み終わるころには、「ありのままの自分でいいんだよ」とすべてを肯定してくれる、確固たるメッセージが込められていることを感じると思います。
親子で「自分らしさ」について話しをする、きっかけにもオススメです。
「フンころがさず」
作:大塚 健太
絵:高畠 純
出版社:KADOKAWA
ボクがフンをころがしていることをみんなは変だという。だから、ボクはフンをころがさないことに決めた。でも友達のキツツキさんは言った。「君はフンをころがすからフンころがしなんだ」って──。
「幼児期から自己肯定感をはぐくむことが大切」といわれいる、いまの時代にぴったり! ※自己肯定感をそだてることにより、ありのままの自分を認め、前向きに生きられるようになるといわれています。
●思いやりの心を育てる3作品。
●思いやりを持って人と接したら、素敵なことが起るかも!
他者を思いやる、大切な気持ちを味いたいときには、この絵本がオススメ。
アメリカの絵本作家、オーゲ・モーラが自身の祖母をモデルに描いた本作品は、2019年にアメリカで出版された子ども向け絵本の中から、最もすぐれた作品に与えられる「コールデコット賞 オナー賞」を受賞しました。
美味しいシチューの香りを胸いっぱい吸い込んで、アーモの限りない思いやりの心を感じてください。
「ありがとう、アーモ!」
文・絵:オーゲ・モーラ
訳:三原 泉
出版社:鈴木出版
おいしそうなシチューのにおいをかぎつけた きんじょのひとたちが、つぎつぎにアーモのアパートにやってきた。そのひとりひとりに きまえよくシチューを わけてあげたのだけど……。アーモ、そんなにあげちゃって だいじょうぶ?
作者オーゲ・モーラの両親はナイジェリア出身で、イボ語が母語でした。「アーモ」は「女王」という意味です。オーゲにとっては「おばあちゃん」をよぶときのことばでした。おばあちゃんは、大きなお鍋をまぜながら、ラジオの音楽に合わせて楽しそうに体を揺らしていたそうです。お鍋の中身はたいていシチュー。夕食の時に近所のひとが来れば、一緒にいかがと誘いました。そうした思いやりや愛にみちた精神が、この本のもとになりました。
●馬場のぼるさんの人柄が投影された主人公・アオさん。
「11ぴきのねこ」シリーズなどを生み出し、三世代に渡り愛されている絵本作家の馬場のぼるさん。絵本ナビでも数多くのグッズが販売され、どれもとても人気です。
馬場のぼるさんの作品の中でも、最も馬場さんご自身の人柄が反映された作品と言われているのが、遺作となった『ぶどう畑のアオさん』です。
ブドウ畑に実ったブドウを、独り占めすることなく、多くの動物たちと分け合おうと言うアオさん。その優しさと強さは、20年経った今でも、私たちに大切なことを伝えてくれます。刊行20年が、そのまま馬場さんの没後20年となる今年、改めて手に取っていただきたい名作です。
「ぶどう畑のアオさん」
作:馬場 のぼる
出版社:こぐま社
夢の中で見たぶどう畑を本当に見つけたアオさん。けれどもおいしそうなぶどうを、オオカミが一人占めしようとして。遺作となった、作者そのままの優しいアオさんのお話。
●直木賞作家・向田邦子の実話を絵本に。
戦時中、まだ小さい我が子を知らない土地へ疎開させる親は、どんな思いで子どもを見送り、子どもを思っていたことでしょう。ほんの70数年前に実際にあった親子の体験を、作品に込めた作家の向田邦子さん。この作品を子どもたちにも伝えたいと思ったのが、向田邦子さんと同じく、直木賞を受賞した経験のある作家の角田光代さんと西加奈子さんでした。
読み聞かせのプロが選ぶ「第1回親子で読んでほしい絵本大賞」にも選ばれた作品です。
「字のないはがき」
作:角田 光代
絵:西加奈子
原作:向田邦子
出版社:小学館
人気2大作家共演! 感動の名作を絵本化
【教科書にも載っている実話を絵本化!】
このお話は・・・
脚本家、エッセイスト、直木賞作家である
故・向田邦子の作品の中でもとりわけ愛され続ける
名作「字のない葉書」(『眠る盃』所収、1979年講談社)が原作。
戦争中の、向田さん一家のちいさな妹と、
いつも怖いお父さんのエピソードを綴った感動の実話です。
向田邦子さんのちいさな妹・和子さんが主人公。
ぜひお子さまと語り合って欲しい作品です。
【あらすじ】
戦争時代、ちいさな妹が疎開するとき、
お父さんはちいさな妹に、
「元気なときは大きな○を書くように」と、
たくさんのはがきを渡しました。
しかし、大きな○がついたはがきは、
すぐに小さな○になり、やがて×になり・・・。
【直木賞作家2人の夢の共演!】
当代人気作家の角田光代と西加奈子の最強コンビで
美しい絵本によみがえりました。
大の向田ファンで知られる角田光代の渾身の描写と
西加奈子の大胆な構図と色彩をぜひ堪能してください。
【編集担当からのおすすめ情報】
子供たちに伝え継ぎたい、感動の絵本になりました。
絵を担当した西加奈子さんの
作家ならではの構図、伏線をもった構成に
目を奪われてしまいます。
装丁のかわいらしいタンポポは、
この絵本の主人公・ちいさな妹をあらわしているそう。
文を担当した角田光代さんは、
文章を書きながら、
絵を見ながら、
校正をしながら、
そのたびに涙が止まらなかったそうです。
●場所が楽しい!絵本3作品。
●ページをめくる度に変化する幼稚園。最後は……。
「ばけますよ ばけますよ。ようちえんが ばけますよ」……ちょっぴりふしぎな呪文をキツネが唱えると、絵の中の幼稚園が、どんどん姿を変えていく。よく見ると、幼稚園だけでなく、周りのものもなんだか姿が変わっていく……。「何で?」なんて聞くだけ野暮。その様子を楽しんで味わってほしい! 『
がたごと がたごと』や『
とろ とっと』などの人気作品を、タッグを組んで何度も生み出した、内田麟太郎さんと西村繁男さんのなんとも楽しいユーモアナンセンス絵本です。
「ようちえんがばけますよ」
文:内田 麟太郎
絵:西村 繁男
出版社:くもん出版
「ばけますよ ばけますよ。ようちえんが ばけますよ」
きつねが呪文をとなえると、幼稚園が、次々に姿をかえるこの絵本。姿をかえるのは、幼稚園だけではありません。幼稚園にいた人も、窓も、げたばこも、み〜んな変身してしまいます。
人気作家・内田麟太郎と西村繁男発、めくるのが楽しい、へんてこ変身絵本。
2012年に絵を担当した、西村繁男さんにインタビューを行いました。
●口を動かして、さあ、早口言葉で言ってみよう!
こちらのレストラン、ただのレストランではありません。美味しい料理が出てくる、楽しいストーリーなのですが、なんと文章がすべてリズミカルな早口言葉! さあ、口を大きく動かして、つっかえないように声に出して読みましょう。フリーアナウンサー・もぎあきこさんの綴る文章は、難しい言い回しはほとんどありません。読んでいると次第にリズムに乗ってきて、楽しくなってきて、気がついたらみんなで声を合わせて読んでいるかも? 読めば読むたび味わいの増す、美味しいお料理絵本です。
「はやくちレストラン」
作:もぎ あきこ
絵:森 あさ子
出版社:金の星社
パーティの料理人としてお城に呼ばれた「はやくちレストラン」のカッキクッケコック。そこでライバルのサ・シースセーソ・シェフと料理対決することになり…!? ユーモアたっぷりの料理名は早口言葉になっています!
●動物たちのスポーツを楽しみながら、数遊びもできる!
美味しい料理でお腹が満たされた後は、ちょっと運動をしていきませんか? 動物たちがそれぞれの得意競技でメダルを狙う「どうぶつスポーツたいかい」の開催です!
しかもこの「スポーツたいかい」、ただスポーツをするだけではありません。選手や観客、競技用具のあちこちに数字が隠されていて、数遊びを楽しみながら、スポーツ大会に参加することができるんです。
石津ちひろさんのリズミカルな文章と、フランスのイラストレーター、ヴィルジニー・モルガンさんのオシャレな絵が楽しい、読むと体を動かしたくなる作品です。
●5月の新刊&オススメ動画公開中。