幼稚園に通うゆうなちゃん。
ゆうなちゃんは、恥ずかしがり屋で泣き虫でおともだちがいません。
…でも、今日。
初めてのおともだちができたのです!
「ゆうなちゃん、あそぼ」
声をかけてくれたのは、りなちゃん。
ゆうなちゃんは嬉しくて、帰り道にお母さんに、そして八百屋のおばさんにも報告します。
「あのね。きょう、おともだちが できたの」
あら、あんなに恥ずかり屋だったゆうなちゃんなのにね。
楽しい一日を過ごしたゆうなちゃん。だけどその夜、少し不安になります。
「りなちゃん、あしたもあそんでくれるかな……」
入園シーズンにぴったりな「おともだち」がテーマのこの絵本。だけど、面白いのは「はじめておともだちができた日」のことを、そしてその次の日までの女の子の心情の変化にスポットを当てて、繊細に、瑞々しく描きだしているところ。
おともだちができたことで、ちょっとだけ強くて前向きになれたゆうなちゃん。明日だって楽しみで仕方がない、はずだったのに。急に心細い気持ちが生まれてくるのも、ゆうなちゃん。どちらも、子どもらしい素直な気持ちですよね。大人は見逃してしまいがち。それを、ストーリーだけでなく、愛らしい表情や、心情を表すかのような色彩の表現で優しく伝えてくれます。
最後のりなちゃん、ゆうなちゃん渾身の変顔に吹き出しながら、毎日が一大事だった小さい子どもだった頃の心情をかすかに思い出します。子どもたちは、このシーンをどんな気持ちで眺めるのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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