濃い紺色の夕闇の中で、三角屋根のおうちにあかりがつきます。
屋根の上に1匹、下に1匹のねこのシルエット。
「よるになったよ ほら おそらが くらい くらい」
「おや やねのうえが あかるくなった」
「おつきさまだ」
だんだん姿をあらわす、黄色くかがやくおつきさま。
もう1匹のねこも屋根にかけあがり、2匹の影はおつきさまを見あげます。
「おつきさま こんばんは」
目をふせて屋根の上に顔を半分だした、おつきさまの「いいおかお」といったら。
小さな絵本のまんなかに、本当に月がのぼったようです。
読んであげると、ページをめくるたびに、幼い子がいきいきと反応することにおどろきます。
雲に遮られおつきさまが泣きそうな顔をすれば、子どもも心配そう。
雲がいってしまえば、あーよかったとほっとします。
子どもは胸をときめかせて、おつきさまをながめ、「こんばんは」をするのでしょう。
今宵もまた、夜空を見あげれば、おつきさまに会える幸せ。
「こんばんは」「こんばんは」って互いにごあいさつする幸せ。
1986年発売以来、たくさんの子どもたちに支持されてきた本。
林明子さんの傑作の一つに数えられるあかちゃん絵本です。
裏表紙もかわいいですよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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