新しい場所に行くのはちょっと怖いし、不安。だけど、私には小さな友達「ビクビク」がいる。ビクビクがいつもそばにいてくれるから、本当に怖い目にはあわないし、ちょっとずつ冒険をして、強くなれる。
だけど、この国に引っ越してきたら、ビクビクは急に大きくなった。どんどん大きくなって、外に出るのも、誰かと話すのも邪魔をする。私の代わりにごはんを食べちゃうし、いびきがうるさくて夜も寝られない。だから私はひとりぼっち。ビクビクが言うように、私は嫌われているのかな。
そんな時、ある男の子が私に何かを言っている。自分で描いた絵を見せてくれている。そして、なんと彼の後ろにもひみつの「ビクビク」が……!
自分だけが抱えていると思っていた、言葉にならないこの感情。心配や不安や緊張が織り交ざったそれを、この絵本では可愛らしい生き物として描きます。それだけで、何だか不思議と心が柔らかくなっていくのです。そして、ビクビクが実は「私だけのものじゃない」っていう事がわかった時、世界が急に少し広く見えてきたりするものです。
自分の気持ちを表現し、向き合うことができるなら。困難に立ち向かおうとしている子の、応援になるのなら。一人でも多くの子どもたちに、この絵本と出会ってもらえることを願うのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む