その灯台が立っているのは、世界のさいはてにある小さな島。永遠に続くようにと建てられ、船を安全に導くために、遠くの海まで光を送るのです。
「……おーい!……おーい!
おーい、こちら灯台!」
灯台のあかりを灯し続けるのは灯台守の仕事。レンズをみがき、油をつぎたし、ランプの芯を切りそろえる。レンズが回り続けるように、ぜんまいをまき、些細な事も全て灯台日誌に書き綴る。
360度見まわしても海ばかり。上へ上へと続く建物の中は全て円形。らせん階段で塔内を移動し、聞こえてくるのは風の音。こんなところに人が暮らすなんて! でも100年程前までは、本当に灯台守は灯台に住んでいたのです。ひとりで、あるいは相棒と、あるいは家族と。
そんな、想像を遥かに超えたところにある様な「日常」を、この絵本は描き出してくれます。具体的に、美しく、とっても魅力的に。そんな一家のもとに船の荷物とともに届いたのは、思いがけない一通の手紙。そこに書いてあったのは?
2019年コールデコット賞を受賞した本作品。絵本の中心に堂々とそびえ立つ灯台の存在感そのものがこの絵本の魅力であることは間違いありません。日によって全く表情の変わる海の中で、霧の立ち込める風景の中で浮かびあがる灯台、更に陸地から眺める灯台。印象的な景色の記憶は、きっと子どもたちの心の中に刻み込まれていくことでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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