小さなかぎ
かたほうだけの赤ちゃんのくつ
ねじれたねっこ
イヌみたいなかたちの葉っぱ
カニのはさみ
ガラスのめだま
だれにもとどかなかった手紙……
この風変わりなリスト、いったいなんだと思いますか?
これは全部、モリネズミのピウスの「ときめきのへや」におさめられた宝物なのです。
ピウスは森や海、町の中を歩いて、見つけたものを持ち帰ります。そして、棚に飾っていくのです。そんなピウスの「ときめきのへや」に並べられた宝物を見るため、あちこちからいろんなひとがやってきました。
しかし、宝物の中で唯一、「どうしてここにおいてあるんだろう?」と、誰もが首をかしげるものがあったのです……。
ユニークなコレクションの中で、みなに首をかしげさせるものって、いったいなんだろう? と興味をかきたてられます。
子どもでも大人でも、自分が大切にしているものが、他の人から見るとガラクタにしか見えないということはよくあります。
それは、ものそのものの価値とは関係なく、ものにまつわる物語や思い出があるからこそ、持ち主にとって大切な存在となるからでしょう。
どこからどう見てもつまらないものが、ある人にとってはときめきと好奇心の源泉となることだってあるのです。
そして、たくさんのものと、ものにまつわる物語でみんなを楽しませていたピウスが、あることがきっかけで、からっぽの空間と孤独の中で自分を見つめ直す姿には、ハッと心ゆさぶられるものがあります。
自分が心底好きなもの、大切なものを見つけるためには、みんなでワイワイ共有するだけではなく、孤独な時間が必要なのかもしれません。
ピウスの宝物の数々も魅力的だけど、読んでいるうちにいろんなことに気づかせてくれる
この奥深い絵本は、私の「ときめきのへや」の特別な場所に並べておきたい作品です。
(光森優子 編集者・ライター)
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