命ある生き物として
まるで、かこさとしさんの科学絵本を読んでいるかのような、丁寧で優しい語り口にまず安心感を覚えました。食物連鎖という複雑なテーマを、子供たちの日常にある「食事」から解き明かしていく導入が見事です。
特に、タカの体内に鳥が、その中に虫が、さらにその中に葉が描かれる断面図には感嘆しました。「タカにも葉っぱが必要」という、一見すると繋がりのないもの同士の関係性を、一枚の絵で直感的に理解させてくれます。
ただ、その連鎖が頂点の捕食者で終わってしまう点には、少し物足りなさを感じました。命が土に還り、新たな養分となる「循環」の視点まで描かれていれば、より生態系の本質に迫れたかもしれません。
とはいえ、人間によるラッコの乱獲が生態系を崩したケルプの話は、非常に説得力のある実例です。私たちの行動が自然界に与える影響を、幼い読者にも分かりやすく伝えてくれます。
一部に科学的な補足は必要かもしれませんが、それを差し引いても、子供の思考力を育む優れた一冊です。親子で対話し、学びを深めるための「考える絵本」として、素晴らしい役割を果たしてくれるでしょう。
投稿日:2025/09/23