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2025年8月 新刊&おすすめ絵本

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戦後80年を迎える、2025年。終戦記念日がある8月は、1年の中でも特に「戦争」「平和」について考えることの多い月と言えるのではないでしょうか。

絵本ナビでも今年は戦後80年を考える特集や記事を例年以上に公開していきました。80年前の悲惨で悲しい出来事を二度と繰り返さないように、私たち大人が、そしてこれからを生きる子どもたちが考えるきっかけとなる絵本を集めました。

「アンネの日記」の作者、アンネ・フランクはどのようにして日記を書き続けたのか……。イギリスの人気絵本作家が描く少女の生涯『絵本アンネ・フランク』

日本人の誰もが特別な日として記憶している広島原爆投下のあの日、あの時間。子どもたちの声といわさきちひろの絵が問いかけてくる『1945年8月6日 あさ8時15分、わたしは』

  • 1945年8月6日 あさ8時15分、わたしは

    出版社からの内容紹介

    1945年8月6日、あさ8時15分。当時の子どもたちが書き残した言葉を、いまを生きるすべての人へ。
    日本で初めて戦争をテーマに、青少年の子どもたちに向けてつくられた絵本『わたしがちいさかったときに』(童心社)の刊行から58年。この本に収録された、原爆を体験した子どもたちの言葉をいまにつないでくれるのは、児童文学作家のあまんきみこ、詩人のアーサー・ビナード、当時の執筆者の小川俊子が語る言葉と、いわさきちひろが描いた絵。とどまることのない時間の流れのなかで、時をこえて当時の子どもたちと出会い、わたしたちは今日を、明日をどう生きるのかをともに考える絵本です。

この書籍を作った人

いわさき ちひろ

いわさき ちひろ

1918年12月15日生まれ。福井県出身。岡田三郎助、中谷泰、丸木俊に師事。代表作に絵本「あめのひのおるすばん」(至光社)、「戦火のなかの子どもたち」(岩崎書店)、「おふろでちゃぷちゃぷ」(松谷みよ子 文 童心社)、「ことりのくるひ」(至光社)挿絵の作品で「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子 著 講談社)などがある。1950年 紙芝居「お母さんの話」(稲庭桂子 文 教育紙芝居研究所)で 文部大臣賞、1959年 紙芝居「お月さまいくつ」(稲庭桂子 文 童心社)で 厚生大臣賞、1973年「ことりのくるひ」(至光社)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。1956年 小学館児童文化賞受賞。

この書籍を作った人

アーサー・ビナード

アーサー・ビナード

アメリカのミシガン州に生まれる。五大湖の魚と水生昆虫に親しんで育ち、高校生のころから詩を書き始める。ニューヨーク州の大学で英文学を学び、卒業と同時に来日、日本語でも詩作を始める。『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞、『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、『さがしています』(童心社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。翻訳絵本に『ほんとうのサーカス』(BL出版)などがある。

「いま聞かなければ、無かったことになる戦争体験がある」強い思いから生まれた、当時の子どもの声を今に伝える65編のメッセージ『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』

  • いま、日本は戦争をしている  ―太平洋戦争のときの子どもたち―

    みどころ

    お気にいりのABCのもようのワンピース。でも、戦争がはじまって、ABCは敵の言葉だから、といって、禁止になった。だからって、こんなへんな色にそめちゃうなんてぇ。(太平洋戦争時の静岡にて「わたしの毎日」より)

    「とにかく防空壕へ!」お母さんに急かされて家の横の防空壕に、はいろうとした。そのとき、妹が、ちがう方向に走りだしたんだ。「そっちじゃない!」低空飛行の戦闘機がこっちにむかって飛んでくる。「ノブちゃん、あぶない!」(1945年樺太にて「妹と機銃掃射」より)

    10歳のおれ、12歳のわたし、7歳のぼく……。太平洋戦争中、子どもたちは、日々、何を感じ、どのように暮らしていたのか。

    「いま聞かなければ、無かったことになる戦争体験がある」

    そんな思いから2022年にスタートしたというこの企画。子どもの頃、沖縄、広島、長崎、満州、樺太、北海道、東京、岩手、静岡、三重、長野、茨城、山梨の各地で、空襲、原爆、地上戦、引き揚げ、疎開を経験した方々、中国残留邦人の方、総勢17名にインタビューを実施。戦争中に見た光景や経験を、当時の口調そのままに、絵と文章で紹介。生きた声を伝える65編。一つのエピソードが一つの見開きに収まり、総ルビ対応、それぞれのページに注釈も入り、どのエピソードからも読むことができるようになっています。

    現地で何度も確認をとりながら完成させていったという場面の数々からは、「何としても証言された方々の記憶の風景を再現させたい」という作者堀川理万子さんの気迫が伝わってきます。と同時に、どんなに理不尽で困難な状況でも生き抜く子どもたちのパワーや、親しみやすさを感じることもできるのです。

    あの日あの瞬間に、誰かと交わした会話。目の前に繰り広げられる光景を見ながら感じた気持ち。自分が得意だったこと、苦手だったこと。そこには子どもたちの等身大の心の声が存在しています。

    今を生きる私たちが、戦争を「自分ごと」として捉え、考える。その入口として、この一冊が大きな役割を担ってくれるに違いありません。

この書籍を作った人

堀川 理万子

堀川 理万子

1965年、東京都生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒業、同大学院修了。絵画作品による個展を毎年開催するほか、グループ展、出版など幅広く活躍。絵本に『ぼくのシチュー、ままのシチュー』(ハッピーオウル社)、『おへやだいぼうけん』(教育画劇)、『げんくんのまちのおみせやさん』(徳間書店)、『権大納言とおどるきのこ』(偕成社)、挿絵作品に『バレエ名作絵本 くるみわり人形』(石津ちひろ/文、講談社)など多数。

今なお残る戦争の爪痕を、小学5年生の少年を通して伝えてくれる児童文学『北緯44度 浩太の夏 ぼくらは戦争を知らなかった』

花火が苦手なおばあちゃんが話してくれた戦時中の出来事。戦争体験者に直接話を聞く機会が減ってきている今、絵本を通じて読み継いでいきたい当時の記憶『ふうちゃんのそら』

  • ふうちゃんのそら

    みどころ

    みいちゃんのおばあちゃんは、花火が苦手です。浴衣を着て花火大会に行こうとしているみいちゃんには、なぜなのか、おばあちゃんの気持ちがわかりません。おばあちゃんは、小さい頃に「ふうちゃん」と呼ばれていたこと、おうちがうどん屋さんだったこと。戦争中は空襲のサイレンが鳴ると、昼も夜も防空壕に逃げ込まなければならなかったことをみいちゃんに話します。ある夜、ひどい空襲で、お姉ちゃんと手をつないで防空壕に入ったふうちゃんは……。

    ぎゅうぎゅう詰めの大人の間でおしつぶされそうになる7歳のふうちゃん。それをぐいっと抱き上げてくれた知らない大人の大きな手。ふうちゃんを励まし続けて手を離さなかったお姉ちゃんの手。手に支えられ、生き延びたふうちゃんを、さらに悲しい出来事がおそいます。

    本書は、中峠(なかたお)房江さんが7歳のときに経験した実話を元に、よこみちけいこさんが描いた絵本。悲しいけれど、小さなふうちゃんが精一杯生きたこと、他にもたくさんの人の命があったこと、家族の愛情が伝わってくる絵本です。裏表紙には、お姉ちゃんとふうちゃんがうどんを食べるのを笑顔で見守るお父さんの姿が描かれ、ふうちゃんが大好きだったお父さんの生前の様子が伝わってきます。

    体験した人は決して生涯忘れない、戦争の思い出。それは同時に、たったひとりのお父さんやお母さんとつながる思い出でもあります。戦争を知らない子どもたちにもぜひ読んであげたい絵本です。

戦争は過去の出来事ではない。ウクライナの作家が子どもたちに向けた描いた切実な思い『戦争が町にやってくる』

  • 戦争が町にやってくる

    みどころ

    色とりどりの花が歌う、ふしぎな町ロンド。
    この町には、だれもが知ってる仲良し三人組がいました。

    ぴかぴか光るガラスの体、電球の妖精みたいなダーンカ。
    ピンクの風船犬、ふわふわ軽い、宝探しの名人ファビヤン。
    折り紙の鳥みたいな見た目のジールカは、空を飛べて、旅が大好き。

    三人をはじめとしたロンドの個性的な住人たちは、町での暮らしを心からたのしんでいました。

    ところが、そんな平穏な日常を壊す、おそろしい影がロンドにやってきました。

    戦争です。

    ウクライナを拠点に活動するアートユニットが描く、平和な町と、壊された日常。その目も覚めるようなコントラストで、戦争の痛ましさを描き出した一冊です。

    写真を組み合わせて作るコラージュと、ポップでかわいらしいグラフィックのキャラクター。
    明るくやわらかな色で描かれる平和と、暗くおどろおどろしい色の戦争。
    ファンタジックで詩的な世界観と、戦争というリアルなテーマ。
    本作はそうしたいくつかの強いコントラストで構成されていて、それが両方の極の強烈な印象を、読者の胸に刻み込みます。

    「ロンドの町の人たちは、戦争がどんなものか知りませんでした。
    ところが、戦争は、どこからともなくやってきました。」

    石で心臓を打たれて、ヒビの入ったダーンカ。ファビヤンはトゲで刺されて足がやぶけ、ジールカは火で焼かれて翼に穴があきました。そして、彼らの傷は物語の最後まで癒えることはありません。

    戦争を止めるために、三人は相手のやり方をならいました。戦争の心臓を狙って、攻撃を返したのです。しかし、すべてむだに終わりました。

    「なぜなら、戦争には心を心臓もないからです」

    どうやっても戦争の歩みを止めることはできないとあきらめかけたそのとき、ロンドの町にある意外なものが、みんなの希望になって──?

    作中で象徴的に描かれる、赤いヒナゲシ。これは、第一次世界大戦の戦死者を追悼するためのシンボルとして知られる花です。現実におおきな戦争が起きてしまった現在、その当事者たる著者らが戦争の悲惨と平和の愛おしさを子どもたちに向けて発信した、心ゆさぶられる作品です。

この書籍を作った人

ロマナ・ロマニーシン

ロマナ・ロマニーシン

絵本作家、アーティスト。共に1984年生まれ。ウクライナのリヴィウを拠点に活動する。リヴィウ国立美術大学を卒業。アートスタジオAgrafka主宰。2011年、ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)で出版社賞を受賞。本作は2015年に刊行され、ボローニャ・ラガッツィ賞を受賞し、世界15言語に翻訳出版されている。2017年BIB世界絵本原画展金牌を受賞した『目で見てかんじて 世界がみえてくる絵本』、2018年ボローニャ・ラガッツィ賞受賞の『うるさく、しずかに、ひそひそと 音がきこえてくる絵本』(共に、広松由希子訳 河出書房新社)など、世界が注目する新進気鋭のユニット。

この書籍を作った人

アンドリー・レシヴ

アンドリー・レシヴ

絵本作家、アーティスト。共に1984年生まれ。ウクライナのリヴィウを拠点に活動する。リヴィウ国立美術大学を卒業。アートスタジオAgrafka主宰。2011年、ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)で出版社賞を受賞。本作は2015年に刊行され、ボローニャ・ラガッツィ賞を受賞し、世界15言語に翻訳出版されている。2017年BIB世界絵本原画展金牌を受賞した『目で見てかんじて 世界がみえてくる絵本』、2018年ボローニャ・ラガッツィ賞受賞の『うるさく、しずかに、ひそひそと 音がきこえてくる絵本』(共に、広松由希子訳 河出書房新社)など、世界が注目する新進気鋭のユニット。

この書籍を作った人

金原 瑞人

金原 瑞人

翻訳家・法政大学教授 1954年岡山市生まれ。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど550点以上。訳書にマコーリアン『不思議を売る男』、シアラー『青空のむこう』、グリーン『さよならを待つふたりのために』、ヴォネガット『国のない男』、モーム『月と六ペンス』、クールマン『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』、サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』など。エッセイ集に『サリンジャーにマティーニを教わった』、日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』など。

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