
いたずらっこの男の子マックスは、今夜もおおかみのぬいぐるみを着ると大あばれ。
「この かいじゅう!」
おかあさんに怒られても平気で言い返す。
「おまえを たべちゃうぞ!」
とうとうマックスは夕飯抜きで寝室に閉じ込められた。
ところがその部屋に、にょきりにょきりと木が生えだして……気が付けばすっかり森の中。そこへ波が打ち寄せてマックスは船に乗り込んだ。長い時間をかけて航海すると、たどりついたのは「かいじゅうたちの いるところ」。すごい歯をガチガチさせて、うおーーっとほえて、目玉をぎょろぎょろさせ、すごい爪をむきだしている。なんて恐ろしい! でもマックスだって負けていない。
「しずかにしろ!」
怒鳴りつけると、マックスは魔法を使ってあっという間に彼らの王さまになってしまったのだ。彼らは一緒に踊り、遊び、森の中を行進し……。
コルデコット賞を受賞しているこの作品は、国際アンデルセン賞をはじめ、数々の絵本賞を獲得しているモーリス・センダックの代表作。世界中の子どもたちを魅了しつづけているロングセラー絵本です。
なんといっても魅力なのは、威勢のいい男の子マックスとかいじゅうたちの緊張感あるやりとり。あんなに迫力のあるかいじゅうたちが、彼の手にかかると何だか愛らしく見えてくるのです。それでもやっぱり小さな男の子。疲れ切ったあとに思い出すのは……おかあさんの懐かしいあの匂い。
豪快でちょっぴり恐ろしくもあるこの絵本。だけど読めばすっかりその世界に入り込んで夢中になってしまうのは、細かく小さなしかけの積み重ね。くるくる変わるマックスの表情に、本心を読み切れないかいじゅうたちの存在。現実と夢の行き帰り。それは永遠のようでもあり、ほんの一瞬のようでもあり。安堵の気持ちで絵本を閉じ、すぐまた読み返したくなってしまう。大人が読めば、子どもの内面の豊かさを思い出させてくれるような1冊でもあるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

かいじゅうの国をたずねよう。コルデコット賞を受賞し、 世界中の子どもたちをひきつけてやまないセンダックの代表作。 子どもの内面のドラマをみごとに描いて、今世紀最高の絵本と言われています。

すごく人気のある絵本のようですし、いろんな賞もとっているし…と図書館借りてみました。
でも読む以前から勝手に「これは男の子向けの絵本だ」と考えていて、娘に読み聞かせるつもりはなく(きっとかいじゅうの絵を怖がるし)、自分だけで読むつもりでした。
自分で読んでみた結果、なぜ人気があるのかわかりませんでした。
絵が怖いし、母親として、なんというか…嫌な感じを受けました。
これは読み聞かせせずに返そうと思いました。
なのに…図書館に返そうと積んであった絵本を、娘が寝る前に引っ張り出してきた!怖がりなくせに!寝る前に怖がってぐずったら嫌だなぁ…と思い、散々止めましたが聞かず、仕方がなく「怖かったら読むのやめるから言ってね」と念押しして読み聞かせしました。
結果、3度も繰り返して読むことになりました。翌日も翌々日も。
娘がわからない。何が気に入ったの?
娘に読み聞かせするうちに、私もこの絵本をちゃんと読むようになりました。
何度も読みながら、いろいろ考えるようになりました。
そして気づきました。
娘は時々、遊びのなかで、自分のぬいぐるみを叱っています。
叱る内容は、実際に自分が私に叱られた内容そのまま。
微笑ましいと思うか、嫌な感じを受けるかはその時の私の気分次第。
「まあまあ、なんでも真似したい年頃だし、叱られた内容をしっかり覚えているのはいいことじゃない?」と笑っていられるときもある。
でも、母親の皆さん!わかりますよね!
「おほほ…」と顔で笑っていても、内心は「ぐぬぬ…」(笑)
たいていイラッとするんです!
私は無意識のうちに、マックスと自分の娘を重ねてみていたみたい。
(だから嫌な感じがした…イラッとした)
一方で娘は、マックスのやりたいことがすごくわかるに違いない。
(だからお気に入りになった…共感している)
「この、かいじゅう!」と叱られたマックスは、本物のかいじゅうに会いに行き、えらそうに命令し、罰まで与える。母親である私は「ちょっとマックス、かいじゅうたちは何か悪さしたの?」と聞きたくなる。「叱られていたのはアナタでしょう?」と。
そんなことはマックス(うちの娘も)おかまいなし。
「だって、真似っこだし」と言い返してくるにちがいない。
そして無実の罪で叱られて罰を与えたかいじゅう(うちの娘はぬいぐるみ)をアッサリ片付ける。だって、おなかがすいたから。
母親である私はイラッとする。
でも夕ご飯は用意するのだ。プリプリ怒りながら。
母子の立ち位置が、これほど絵本の印象にズレを与えるなんて!
名作です。 (なつえさん 30代・ママ 女の子3歳)
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