合言葉は、「むしはともだち!」
さっちんは、虫の森に住んでいるオオクワガタのオオクワくんと友達です。そんな冒頭の一文からはじまるタダサトシさんの絵本「むしのもり」。最初のページから、「?」と目が離せなくなるのは、
擬人化された「オオクワガタ」のオオクワくんが、主人公の男の子「さっちん」と等身大で描かれていること!そうなんです!この絵本シリーズでは、登場する昆虫達がみんな大きくて愛らしくて、
何より人間の言葉を話す友達として描かれているんです。
魅力的な短編3本で構成されている贅沢な本作は、さっちんが、オオクワくんに招待された森の「すもうたいかいのまき」、虫たちが主催する虫たちのための愉快な「おまつりのまき」、そして虫たちの冬の過ごし方がよくわかる「はるのまき」とどのお話もさっちんと森の虫たちの微笑ましい交流を丁寧に描いた友情物語です。「はるのまき」では、3月になってオオクワくんたちと遊びたくて仕方のないさっちんが、冬眠している虫たちを次々と訪問し声をかけるのですが、初夏が活動時期のオオクワくんたちは、残念ながらまだまだ眠たそう。代わりに、春から元気に飛び回っているテントウムシ、ミツバチや蝶々たちがさっちんと花畑で遊んでくれることに・・・。昆虫達がとても可愛いのに驚くほど写実的で、しかもそれぞれの虫の暮らしや特徴がちゃんとお話の中に盛り込まれていることが、
タダサトシさんの描く「虫の絵本」の魅力です。
楽しい虫たちとの空想世界の中にも、子ども達がきちんと現実で遭遇する虫の世界に結び付けられるよう配慮されています。絵本に登場する虫たちには全て虫の名前が書かれていて、こっそり背景の中に擬態化して登場する虫たちの名前も最後のページで答え合わせができるようになっています。どのページをめくっても、タダさんの昆虫達への愛情がたっぷりと感じられる作品。こんなに面白い、かわいい顔しているの?と驚きの見え返しページには、真正面からみた虫の顔がたくさん載ってます。
虫好きな子にも、そんなに好きじゃない子にもプレゼントしたら絶対に喜んでくれるおすすめの絵本です!
(絵本ナビ編集部)
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