森の朝、一番の早起きはおじいさん。おかあさん、おばあさん、子どもたちも次々に目を覚まし、起きてきます。なにしろこの家にはみんなで14ひき、野ねずみの大家族が住んでいるのです。
冷たい水で顔を洗い、さて朝ごはんのしたくです。野いちごつみに出かけるのは、兄弟一番上のいっくん。ついていくのは誰? あれ、くんちゃん。まだ小さいのに大丈夫かな? 広い森の中で、無事に野いちごを見つけられるかな?
おとうさんたちは火を起こし、作っているのは特製スープ。台所でくるくる粉を丸めてつくっているのは何でしょう? 焼きあがったのは、ふっくら美味しそうなどんぐりパン!いっくんたちが森から帰ってくる頃、もうお腹はぺこぺこです。大きなテーブルにお皿とスプーンとみんなで作ったあさごはんを並べて……さあ今日も、14ひきの一日のはじまりです。
大家族で囲む朝の食卓、なんてうらやましい! 思わずそんな感想が口からこぼれてしまうのは、いわむらかずおさんの代表作「14ひき」シリーズの記念すべき最初の作品『14ひきのひっこし』と同時に発売された『14ひきのあさごはん』です。
画面いっぱいに広がるのは、豊かで美しい自然の風景。小さな14ひきたちと同じ視点になってのぞきこめば、そこには沢山の草花や虫や動物たちが見えてきます。生き生きと動き回っているのは、個性的な兄弟たち。「おや、まだ ねむそうなのは だれ?」優しい問いかけに、子どもたちは夢中になって観察したり、考えたりしながら、絵本の世界にしっかり入りこんでいけるのです。
今や絵本の中の14ひきの家族の姿は、私たちにとっては理想のイメージとなりつつあります。それでも繰り返し読んでいる間に目にする景色やその感覚は、子どもたちの体の中にしっかりと経験として刻み込まれていくのでしょう。ぜひシリーズを通して、親子で一緒に季節の移り変わりまで体験してみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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