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「もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかもわかりませんでした。・・・」 泣きながら、のろしのように空へと突き進むよだか。切り裂くような哀しみと祈りは、青い星となって、いまも静かに燃えている・・・よだかの熱い哀しみと命のきらめきを、ささめやゆきが静説なクレパスのラインで描く、珠玉の1冊。
▼「宮沢賢治の絵本」シリーズ
【著者プロフィール 】 ささめや ゆき 1943年東京生まれ。1970年にパリに渡り、翌年ニューヨークへ。1972年再びフランスに戻り、シェルブール美術学校へ通う。1973年に帰国。帰国後、銅版画をはじめ、本の挿画、絵本などを手掛ける。1974年銀座あかね画廊にてフランスで描いた絵の展覧会開催。1983年東京セントラル美術館版画大賞展入選。1985年「ルーが来た日」がベルギー・ドメホルフ国際版画コンクール銀賞受賞。1995年「ガドルフの百合」(宮沢賢治・文)で小学館絵画賞受賞。1999年講談社出版文化賞さしえ賞受賞。2001年「あしたうちにねこがくるの」(石津ちひろ/文 講談社)で日本絵本賞受賞。主な絵本に「マルスさんとマダムマルス」(原生林)「はだかのカエルとはだしのライオン」(講談社)など多数。 続きを読む
改めてこの絵本を読んでなんて切ないんだろうと思いました。
私が幼い頃から母に「人を外見で判断してはいけない」と厳しく言われて育ちました。
顔にコンプレックスを抱える母にとってこれまでの人生は娘の私でも知りえない辛い経験があったのだと思います。
しかし社会とは本当に冷酷な一面を抱えており、小学生になった私にも現実の冷たさを教えました。
太っている、運動が苦手、先生に好かれている等等様々な理由で子どもの社会でも他者を排除しようとすることがあり、同調しない私にもその排除の刃は向けられました。
もし小学4年生の時の私がこの物語に出会っていたら安易に「夜だかのように星になってしまいたい」と思ってしまっていたかもしれません。
息子はまだ幼く、今は世界の良い部分をたくさん教えてあげたいと思っていますが、もう少し成長し社会にはあってはならない「差別や偏見」というものも実際に存在するということ、しかしそれに決して乗じてはいけないということをこの絵本を介して話す機会があればいいなと思います。
ささめやゆきさんのクレパス画は時に優しく時に激しく夜だかの感情を表していると思います。
息子と絵本を読んだときに私の話とともにこの絵が息子の心に強く残るのではないかと思います。
賢治の絵本を通じて夜だかのように星になってしまう子どもたちがいなくなることを願います。 (うさごんさん 30代・ママ 男の子2歳)
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