赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?
どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。
ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。
不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなっちゃうの? と、予想できない展開にハラハラドキドキ、目が離せません。そんなモモに手を差しのべるのは、時間をつかさどる不思議な老人マイスター・ホラと、ちょっと先の未来を見通せるカメのカシオペイア。彼らとモモとの哲学的なやりとりは、私たちに対する問いかけであり、「時間とは日々の生活であり、その人自身である」という真理を教えてもくれます。そして疲れてしまったモモの心を、温かいもので満たしてくれるのが、黄金色のクロワッサンとホットチョコレート! この最高の組み合わせは絶対に忘れられません。
「モモのところに行ってごらん!」困ったことがあるとき、人々はこう言います。モモは、生きていく上で何が一番大切か、何を守るべきかを知っているのです――友だち、想像力、自由。遊ぶ時、モモと子どもたちは想像力を全開にして驚異の大冒険に乗り出します。その興奮を、みなさんもぜひ一緒に体感してください。「時間がない」「そんなの役にたたない」なんて口にしがちな、忙しがっているすべての子どもと大人に読んでもらいたい一冊です。この物語を読めば、時間に対する考え方が変わってしまうかもしれません。
(光森優子 編集者・ライター)
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