「いよいよ明日からお店をはじめます。
オムレツやです。まってます。シャルルより」
シャルルくんからの手紙を受取ったフンボルトくんは、何年も前にした大事な約束を思い出しました。
コックの修行に出たシャルルくんがお店を開店した時は、りんごを持って絶対食べに行くと言ったのです。
手紙には、お店の地図も入っていました。
次の日、フンボルトくんはりんごと地図を持って、生まれて初めてまちに出かけました。
まちは驚くことばかり。知らない間に行列に並んでいたり、洋服を買ってしまったり。
まちに振り回されているうちに、フンボルトくんは地図をなくしてしまうのです。
無事にシャルルくんのお店を見つけることはできるのでしょうか?
壮大で美しい景色のフンボルト農園から、にぎやかな都会にあるシャルル食堂の遠いこと。
りんごと地図だけをにぎりしめたフンボルトくんの心細さが伝わってくるようです。
それでも、初めてのまちのにぎやかさに圧倒されながらも、結構楽しんじゃっているのがこの絵本の楽しさであり、フンボルトくんの人柄の良さでもあり。あちこちに見える看板や、商品の品揃え、通行人のファッションなど、どこか懐かしい感じのする色彩で細かい所までしっかり描かれた絵が本当に魅力的。
そしてその魅力が一番輝くのは、真っ暗になった通りに一軒のお店のあかりが浮かび上がった時。
もう、フンボルトくんの気持ちと一緒になって走り出してしまいそうになります。
二人が出会えた時の表情といったら…。
切なさ、心細さ、懐かしさ、にぎやかさ、嬉しさ。
そういった色々な感情を全て包み込んでくれるような、本当にあたたかい絵本です。
オムレツとりんごのグラタン、美味しそうだなぁ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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