表紙を開くと、そこは朝の街並。並んだ家の窓から子どもたちが顔を出して、くちぐちに「おはようございます!」とあいさつしています。元気いっぱいの子、まだ眠そうな子・・。さあ、子どもたち、1日の始まりです!
ギョウ フジカワさん(1908−98)は、日系アメリカ人の女性イラストレーター。カリフォルニアで生まれ、ウォルトディズニースタジオでの仕事の他、アメリカで様々な広告や雑誌のイラストを手がけました。その後、子どもの本にたずさわり、自身で文章を書いたものを含め数多くの絵本を制作しています。
この『こどものじかん はる なつ あき ふゆ』は、日本では初翻訳作品となっています。季節ごとの遊び、大好きなもの、おまじない、秘密の場所・・子どもたちをとりまく風景が、美しいイラストレーションと言葉で綴られます。
「しあわせ」って どこにあるか しってるよ それは ぺとぺとの どろんこの なか!
ばっしゃ ばっしゃ はねて ジャンプして きゃあっ ははっ こっちだよ!はやく おいでよ きみもさ いっしょに!
古き良き時代のアメリカの空気と、素朴な遊び。大人にとってはどこか懐かしく感じる雰囲気も、現代の子どもたちには新鮮に映るかもしれません。けれども思い切り遊ぶ子どもたちの姿は、時代や国が違っても変わりませんね!
何よりフジカワさんの描く子どもたちの愛らしさに目を奪われます。あたたかく繊細なタッチで描かれた子どもたちの表情や仕草は、私たちが想像する理想の子どもの姿そのもの。眺めているだけで幸せな気持ちになってくるのです。
子どもたちにとって身近な感情を問いかけるページがあるのも、この絵本の世界を深めています。どんなときに悲しい気持ちになる?優しい人になるにはどうしたらいいの?親子でゆっくり話し合いながら、読んでみたいですね。
そして ゆうひが しずんでいく
いちにちの おわりの とくべつな じかん
こころが しん と なる
思い切り遊んで、食べて、考えて、時には悩んで・・・。毎日成長していく子どもたちにとって、1日の出来事全部が大事、だから毎日とっても忙しい!原題の「Oh! What a Busy Day!」は、フジカワさんの、子どもたちへのそんな温かいまなざしが感じられるようです。
時代を超え、世界中で愛され続けている、ギョウ フジカワさんの世界。
幅広い世代に手にとってもらいたい絵本です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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