家族の絆を関西弁であたたかに描き出した、「おとん」、「おかん」につづくシリーズ三作目。
今回、主人公の男の子は、どうしておかんとおとんが結婚したのか知りたくて知りたくてしかたなくなってしまったようです。
「なあ、おかんとおとんはなんで結婚したん?」
なかなか話してくれないふたりですが、何度も聞いていくうちに少しずつ、ふたりが夫婦になるまでの日々が明らかになっていきます。
相手のことを想ってしていたことが、実は可笑しく思われていたり。
当たり前だと思ってしていたことが、相手にはとても変に映っていたり。
別々に大人になったふたりが出会い、親しい存在になったときに起こる、ささやかなすれ違い。
今ではあたりまえのようにそばにいるふたりが、初めのころに感じたそんな、相手の可笑しかったところ、驚いたところを競うように語る場面を読むと―
ああ、ふたりははじめから「おかんとおとん」だったわけじゃなく、たくさんの日々を積み重ねた末に相手を選んで夫婦になったのだな。
そのことがうかがえて、なんとも愛おしく、温かな気持ちになります。
なんだかひどく照れくさくなってしまったおかんとおとんに、男の子は言います。
「すきって ゆうたら はずかしいんか? ぼくはぜんぜんはずかしないで! だって―」
続くラストシーンを読んで、好きと好きとがつながって家族が生まれるんだなあ、と胸が熱くなりました。
また、「おかん」、「おとん」に引き続き関西弁で語られている本作ですが、著者のサイトでは、著作を様々な地方の方言で翻訳したものを募集しています。
関西弁をいろんな方言に直して読んでみるのも楽しいですよ!
故郷の言葉を見つめ直すきっかけにもなる一冊。
(堀井拓馬 小説家)
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