町の仕立屋、ハリネズミのチクチクさん。
でも彼女のお店には、布が一枚もありません。
それもそのはず、チクチクさんのお店は、着られなくなった服をすてきなものに作り変える、リユースの仕立屋さんなのです。
うさぎの服はよそゆきのカバンに。
あひる親子のチョッキはおそろいの帽子に。
ところが、町の人気者チクチクさんはある日、カバンひとつで旅に出ます。
「きられなくなった ふるい ふく♪
ちいさくなった こどもふく♪
なんでも かんでも したてましょう♪
つかえる ものに したてましょう♪」
行く先々で服を仕立て直すチクチクさんは、旅の途中ですてきなお城にたどり着きます。
お城に住んでいたのは、『世界一オシャレな王様』!?
柄布やビーズ、糸、フェルトを使い、刺繍で絵を描いている本作。
他の画材には出せない、あたたかでやわらかな独特の質感と立体感は、まるでぬいぐるみの世界。
ページの隅々まで、ゆっくりと味わいながら読み込みたくなる緻密な作り込みで、1ページ1ページがそれぞれにひとつの作品としてながめていても飽きのこない、読み応えばつぐんの一冊です。
また、生地でできているからこそチクチクさんの仕立て直すものには強い説得力があり、ものを大事に使うこと、リサイクルすることの大切さを教えてくれる作品でもあります。
背中の針に様々な色の糸を巻いたボビンをいくつも刺した、小さな体のチクチクさん。
暮れる桃色の空を背景にして輝く、王様の住む豪華なお城。
そんな素敵な刺繍デザインであふれる本作ですが、いちばんのみどころはなんといっても、王様の着なくなった服を全部使って作り上げる、渾身の一着!?
一体チクチクさんは、何を作ったのでしょう?
女の子にとてもオススメ、「かわいい」がぎゅうぎゅうにつまった夢のような絵本です。
(堀井拓馬 小説家)
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はりねずみのチクチクさんは、まちで人気のしたてやさん。したてやさんといっても、材料になる布は一枚もなく、背中の針にいろいろな色の糸がくっつけてあるだけです。
今日もお客さんがやってきました。うさぎさんが、古くなった洋服を持ってくると、チクチクさんはハサミで洋服を切り、背中から針をぬくと、糸をとおして縫い始めたのです。
♪ちくちく ちくちく ちっちっち♪
チクチクさんは、楽しそうに歌いながら、かわいいカバンを縫い上げました。続いて、あひるの親子やくろねこさんが、着られなくなった古い服や子ども服を持ってくると、チクチクさんはぼうしやぬいぐるみにしたててくれました。
そんなある日、チクチクさんは旅に出発しました。そこで、世界一おしゃれな王様と出会い……!?
布やフェルトを使った緻密なステッチ作品を絵にしているので、本物の質感や立体感が伝わってきます。リサイクルすることの楽しさも伝わる絵本。
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