東京の一極集中がよく問題視されるが、
文化面でいえばやはり東京は突出して優れた環境にあるといえる。
上野という一角だけみても、どれだけの美術館や博物館があるだろう。
そこで開催される展覧会のプログラムを見るだけで
やはり東京の優位性は揺るがない。
中でも、世界文化遺産に登録され大きな話題となった国立西洋美術館。
本館の建物を設計したのはル・コルビュジエで、1959年に開館した。
『西の魔女が死んだ』などで多くの読者をもつ梨木香歩さんが文を書き、
「リサとガスパール」シリーズの画家ゲオルグ・ハレンスレーベンさんが絵を描いた
『森のはずれの美術館の話』は、
この国立西洋美術館を題材とした絵本である。
「森のはずれ」とあるのは、国立西洋美術館が位置するのが上野の森の東のはずれだから。
全体は二部構成でできている。
一部は「電車に乗って美術館にきた ある母子の話」で、これにはハレンスレーベンさんの絵がつく。
お話の中に国立西洋美術館に所蔵されている絵画がモチーフとして描かれている。
この絵本仕立ての物語もファンタジー性が強い。
絵画の鑑賞が人それぞれの思いでその方法も感じ方も違うように、
このお話も読む人の思いに委ねられている。
二部は「西洋美術館クロニクル」となっていて、国立西洋美術館が誕生するまでのことが、
梨木さんの詩文のような語りで綴られている。
この美術館が所蔵するコレクションが「西洋の窓」として、東に暮らす私たちに開かれていることが、
なんとも幻想的に描かれている。
一幅の絵画を鑑賞したような読後感であった。