むかしのお話です。「ひとつめこぞう」をつかまえて見世物にしようと、見世物師の男が旅に出ました。
江戸から100里もいったところで旅人の話のとおり、ひとつめの女の子を見つけます。
「おいで、おじさんがいいものあげるから」とつかまえようとしますが、「あーん おかあちゃーん!」女の子の大声を聞きつけた人がたくさん追いかけてきて・・・
とうとう捕まった男、引き立てられた奉行所でひょいと顔をあげ周りを見ると
・・・なんと、自分以外みんなひとつめ!?
場所が変われば「見世物にされる」立場が逆転してしまうこわさとおもしろさ。
せなけいこさんの描くおばけ絵本は小粋でユーモラス、かわいい貼り絵が特徴ですが、さらにお話の内容のちょっぴり不気味なところがたまらない魅力なんです。
せなさんはちゃきちゃきの東京生まれ。亡きおつれあいは落語家でいらしたそう。
江戸のお話が堂に入り、オチが何となく落語っぽいのもうなずけます。
中表紙で「ひとつめ」の女の子が舞い、最終ページで「ふたつめ」の男が半泣きの顔で舞っているのも見どころです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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