「もったいないことをしていると、もったいないばあさんがくるよ!」
家庭や園でもすっかりお馴染みになってしまったこのフレーズ。
ご存知、真珠まりこさんのベストセラー絵本『もったいないばあさん』から生まれてきた言葉ですよね。
その「もったいないばあさん」シリーズは、今年でなんと10周年!
彼女がどんなに怒ったって、愛され続けているのです。
そんな記念すべき年に、待望の最新作が登場しました。
『もったいないばあさんの てんごくと じごくのはなし』。
なんだか意味深です。
もったいないばあさんがてくてく歩いているのは、ちょっと怖そうなところ。
「ここは どこ?」「はらがへった」
泣いたり、わめいたりしている人たちの前に立ちはだかっているのは、こん棒を持った大きな赤いオニ。どうやらここは地獄のようです!
オニが言います。
「さあ、この長いスプーンを使ってスープを飲んでみろ」
ところがみんな我先にとおしのけあい、おまけにスプーンが長すぎるので、誰も上手に飲めません。
「ああ、もったいない!」
そこで登場したのは、もったいないばあさん。おばあさんが、みんなに見本を見せようとすると、
「なんでここにいる! あっちいけ!」
オニに飛ばされてしまいます。
びょーーんと着いた先は・・・?
今回のもったいないばあさんは、説話や寓話として古くから伝えられているお話がもとになっている、ちょっぴり不思議な物語。地獄や天国を舞台にしたって、「もったいないばあさん」はやっぱり「もったいないばあさん」。いつだって教えてくれるのは、やさしい思いやりと感謝の気持ちを持つことの大切さなのです。もったいないという精神は、「食べ物」や「もの」に限ったことではないのですよね。
小さな子どもたちはお話を楽しみながら、でもきっといつか、もったいないばあさんが本当に伝えたかったことを自分で気がつくのでしょう。だからこそ、このシリーズが長く続いていくことが大切なのかもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む