年老いたゾウは自分の死期を悟るが,一緒に暮らしていたネズミはそれを受け入れられない。
しかし幾つもの季節を重ねるうちにネズミも成長して…。
想像してみてください。だいじな愛するひとがあの世にいってしまうことを。だれでも、すぐには受け入れられないでしょう。しかし、月日がすぎていくなかで、ひとはいつしか、つらく悲しい別れでも、それを受けいれられるように心が成長するのです。幼いネズミくんは年老いたゾウさんに、「いっちゃいやだ」といいます。しかし、弱ってきたゾウさんを一生懸命ケアするうちに、心が成長して、ゾウさんがゾウの国に渡るつり橋を修理してあげます。そして、「こわがらないで」といって見送るのです。ゾウさんは「だいじょうぶ」といって、渡っていきました。
この物語は、著者が幼いころから死について話してくれた祖母との別れの体験をもとに書いたそうです。いまの時代、家族の病気や死について、子どもは会話の輪のなかにいれてもらえないため、一生のなかでとてもだいじな死について学び、心を成長させる機会を失っています。この絵本は大人にも子どもにもだいじなことを語りかけているかと思います。
―― 柳田邦男(本書帯文より)
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