おなかのポケットから出てこない赤ちゃんカンガルー、ピープーに、お母さんは、外の世界の素晴らしさを色々と
語りきかせますが……。外への一歩をためらう子どもの気持ちを優しく汲みつつ、自然にひとり立ちを促す温かい絵本。
読後、子どもをぎゅっと抱きしめたくなるような絵本です。
赤ちゃんがはじめてよちよち歩きはじめる。やがてお母さんから、はなれて遊べるようになる。子どもにとって、こういう成長のステップは、大人にたとえるなら、高さ5メートルの棒高跳びに挑戦するに等しいくらいの大冒険です。それだけになかなかそういうステップを踏めない子もいます。
この絵本のカンガルーのお母さんは、なんと賢いことでしょう。わが子がおなかのポケットの温もりの中からなかなか出ようとしなくても、あせったりしません。やさしく言葉をかけて、ポケットから出て、大地に立つように誘います。
幼い子に限らず、子どもをひとり立ちさせる愛のある育て方とはこういうことなのだと気づかせてくれます。なにごとにつけ、「はやく、はやく」とせかせかしがちないまの時代に、とても大切なことを語りかけてくれる絵本だと思って翻訳しました。
―― 柳田邦男(本書帯文より)
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