「ぼくの ぼうし どこいったん?」
くまが、なくなってしまったお気に入りのぼうしを探して歩いています。
途中で出会った動物たちに聞いて回りますが、
「しらんなぁ」 「このへんでは みてへんわ」 「ぼうしってなんや?」。
誰もくまの赤いぼうしを知りません。
悲しみにくれるくま。
ぼうしのことを思い返すうち、
「ぼうしなんてみたこともないで」
と話していた誰かの姿が、脳裏によぎります。
そういえば・・・!
作者のジョン・クラッセンさんは、カナダ出身、アニメーションなど映像も手がける新進気鋭のクリエイター。 独自の世界観とユーモアあふれるストーリーで、原書はニューヨークタイムズ2011年絵本ベスト10にも選ばれています。
その洗練されたデザインと色彩にも惹きつけられますが、独特のフォルムと、とぼけた表情の動物たちがなんとも味わい深く、視線が動くだけでハッとするような不思議な迫力があります。
そして、日本語翻訳版の訳を手がけたのは、人気絵本作家の長谷川義史さん!
シックなアメリカ生まれの絵本に、大阪弁の訳。
意外なようで、しっくり、いやピッタリとはまる、まさに絶妙の取り合わせなんです。
長谷川さんならではの軽妙な言い回しが、原書とは一味違ったおかしみと魅力を加えていて、2012年度、書店が選ぶ「第5回MOE絵本屋さん大賞」で2位を受賞するなど、日本でもすっかり人気作となっています。
お話の最後、ドキッとする結末が待っています。
くまと、ぼうしを頭にのせたうさぎが見つめ合うシーンの緊迫感。
おはなしを通して語られる、ゆるーい大阪弁とのギャップが、その緊張感を増幅させているんです。
くまのぼうしはいったいどうなったのでしょう。そのあと何が起こったの・・・?
その結末を本は語ってくれません。
「え!これって、もしかして・・・?」
読んだあと、きっと誰かと話したくなりますよ。
1度読んだら忘れられないドキドキと面白さ、ぜひ周りの人たちと分かち合ってください!
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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