ぼくはどんぐり。コウくんのどんぐりです。ぼくのおしりには「ケーキ」とかいてあります。コウくんがつけてくれたぼくのなまえです。
コウくんはだいすきなどんぐりのぼくといっしょに「よーい、どん」とかけっこをしたり、あめのひもげんきにさんぽをしたり、いっしょに泳いだり。でも秋のある日、「ケーキ」はまいごになってしまいます。次の日もその次の日もコウくんは探しにきます。枯れ葉をはらいのけ、おしりをうえにしてがんばってコウくんに見つけてもらおうとしても、見つけてもらうことができません。やがて「ケーキ」のうえには、白いふわふわがまいおり、ぬくぬくの落ち葉のふとんのなかで眠りこんでしまい・・・。
太陽のひかりがまぶしくて目をさました「ケーキ」が見たものはなんだったでしょう。季節がうつり、時がうつり、風景が変わるなかで立ち続ける木。木の子ども、どんぐりとコウくんの絆(きずな)。そこには子どもの頃かわした約束を一生覚えているように、心のどこかをつかんではなさない感触があります。胸にせまる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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