フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ22巻は、上方落語『胴切り』が原作の『ふたりでひとり』。
お侍さんがいる時代の、大阪が舞台のお話です。
ある寒い夜、酔っぱらった竹さんは、家に戻る途中、身勝手な侍に刀で斬られてしまい、腰から上と下が真っ二つになってしまいました。
胴と足が離れてしまった竹さん。「えらいことになった。これでは家へ帰られへんわ。」胴のほうは動けず、足は寒くて震えています。困っていたところへ、友達の松さんが通りかかり、「不思議なことがあるものやな」と、(竹さんの事件に)のんきな感想をもらしながら、竹さんの胴も足も連れて帰ってくれました。
翌日、松さんの助けで、竹さんの胴と足には別々の、ぴったりの仕事がみつかりました。胴のほうはお風呂の番頭さん、足のほうは麩作りの職人さん。どちらも一生懸命働いて、評判は上々になりました。
ところが、胴のほうは、足に、あるお願いごとができて…。
子ども向けにも落語を伝え続けている落語家、桂文我さんの上方落語イチオシのお話です。文我さんによる語りは、軽妙でとにかく愉快。なんともシュールな設定ながら、のんきな竹さんと松さんの掛け合いで進むのが楽しく、上方なまりもかわいくて、くすくす笑ってしまいます。最後の落ちまでの奇想天外な展開に、上方落語ならではの遊び心をたっぷり楽しめますよ。
石井聖岳さんのユーモラスなイラストは、時代の雰囲気とともに、竹さんの胴と足の関係も一目でわかり、絵本と落語の橋渡しをしてくれます。人間はのんきな反応である一方、犬や猫が、竹さんの姿に、素で驚いたりしているのも楽しいですね。
上方落語の傑作『胴切り』初の絵本化を、どうぞお楽しみください。
(長安さほ 編集者・ライター)
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実際ならありえないことを言葉の力だけで軽々と描き出すのが、落語のおもしろさ。
なかでもシュールな噺として有名な「胴切り」のユニークさを飄々と見せてくれるのがこの絵本です。
侍にまっぷたつに切られてしまった竹やん。怒鳴る竹やんの脇を、ひょこひょこ歩く足の姿のおかしなこと。
とんでもないことになっているのに、「不思議なことがあるもんやな」とあっさり納得する松ちゃんの能天気さ。
胴と足がそれぞれに風呂屋の番台、麩の職人となって働きにいくというのも人を食っていて庶民の頼もしさ、
明るさを感じずにはいられません。人気絵本作家石井聖岳さんが初めて落語絵本に取り組みました。
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