森の奥にある、ちょっと変わった病院。「1ばんのかた、しんさつしつへ おはいりください」と呼ばれ視察室へ入っていったのは……。ながーい首がからまってしまった、和服姿のろくろっ首でした! たぬき先生もその姿にびっくり。でもオイルを塗って引っ張ったら、つるりとほどけましたよ。
旅帰りで頭の皿をひび割れさせてしまったカッパ、乾き目のひとつ目小僧、鼻に棘が刺さった天狗……と、次々に妖怪がクリニックにやってきます。どんな困ったことも、ちゃんと診察して手当てをしてくれるのですから、さすが、妖怪のための病院、たぬきクリニックのたぬき先生!
しかも先生ならではの得意技もあるんですよ。「緊急手術!」となったら、手が2本では足りませんからね。えっ、たぬき先生、化けちゃったの……!?
ほのぼのとした診察風景。先生の優しい表情、ユーモラスな患者とのやりとりにほっこり。ここは妖怪たちみんなに頼りにされているんですね。たぬき先生のあたたかさに、「こんなお医者さんがいたらいいな」と子どもたちは憧れるのではないでしょうか。
作者の長谷川あかりさんは第9回MOE創作絵本グランプリ佳作、第17回タリーズピクチャーブックアワード絵本大賞、第11回日本新薬こども文学賞絵本部門の最優秀賞などを経て、本書が初めて絵と文の両方を手がけたデビュー作。読み聞かせにも、ひとり読みにもちょうどいい感じのおはなし絵本です。今後の作品が楽しみですね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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