「はしるのが とても おそい おおかみがいた。」
……走るのがおそい!?
もうこの最初の一文で驚かされてしまいます。
だって、おおかみの足が遅いなんて、致命的。しかもぶたよりも遅いというんですから、おかしな事が起きない訳がありません。案の定、彼はどれだけ追いかけても一匹もぶたをつかまえられない。そして、思うのです。
「いちどでいいから、ぶたを腹いっぱい食べてみたい」
そんな時通りかかったのが、きつね博士。なんでも、とっておきの薬があると言うのだけれど……どう見てもこれは怪しい、ですよね。
さて。ここからは抱腹絶倒、ただひたすら笑ってしまいます。「ぶたのたね」「たわわになったぶたの実」「ぞうのマラソン」そして……。なにが起きているのかは、読んでからのお楽しみ。絵本の中でずっと変わらないのは、おおかみはずっと必死だということ。でも、だからこそ。ヘンテコな事件が起こり続けるのです。もうそれは見事なものなのです。可笑しくてたまりません。
ちょっぴりシュールでナンセンスな作品の多いイメージのある佐々木マキさんですが、このシリーズは深く考える暇はありません。だって、いい意味でとってもばかばかしい。何回読んでも後には残らない。それはきっと主人公のおおかみがちっともめげない楽天的なキャラクターだから? 心配ご無用、彼はその後も「また」「またまた」「またまたまた…」ぶたを追いかけ続けているようですよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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