これは
くれよんです。
でもね
この くれよんは
こんなに
おおきいのです。
登場したのは一見、ごくふつうのオレンジ色のクレヨン。ところがページをめくると、その上に、猫が乗っている!?そう。実はこれ、大きな大きなゾウのクレヨンなのです。巨大なクレヨンを鼻で「にゅー」っとつかんで、「びゅー びゅー」と次々に絵を描くゾウ。それはもうすごい迫力で、ジャングルの動物たちは、本物の池だと思って飛び込んだり、火事だと思って逃げ出したり、次々と勘違いをしてしまいます。
子どもたちが毎日のように手にする道具なのに、ちょっと考えもつかない設定です。長新太さんのシュールな世界は、のっけから子ども心をがっしりとつかみます。この「びゅー びゅー」のスピード感こそがお絵かきの気持ちよさだっていうことは、長さんと子ども達はよく知っているんですよね。カラフルで大胆なクレヨン画を眺めながら、感覚を刺激された子どもたちはきっと自らの手にもクレヨンを持って何かを描きはじめるのではないでしょうか。
ぞうは
まだ まだ かきたりない みたいで
くれよんを もって かけだしました。
最後にクレヨンを持ったまま駆け出したゾウが描いたものは何でしょうか。この絵本では、そんなゾウの姿を通して長さんの描くことへの情熱までも伝わってくる気がします。子どもたちにも、いつまでも、こんなふうにのびのびとお絵描きをしてもらえたらすてきですね。
(三木文 絵本ナビライター)
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