ちょうちょと ちょうちょは せんそうしない
きんぎょと きんぎょも せんそうしない
くじらと くじらは せんそうしない
すずめと かもめは せんそうしない
すみれと ひまわり せんそうしない
・・・
同じ種同士でも、たとえ種が違っても、にんげん以外の地球上の生きものはだれもせんそうしません。その中で、なぜにんげんだけが、にんげんの大人だけが、せんそうをやめられないのでしょうか。
日常の中で、子どもたちに戦争のこと、平和の大切さを伝えていくことはなかなか難しいことかもしれません。事情が複雑すぎていたり、身近に実際の体験者が少なくなっていたり、歴史上の出来事があまりにも残酷なために、どこから、どんなことばで伝えたら良いのか迷ってしまうことも多いのではないかと思います。
けれども本書を読むと、伝えるべきことは、ほんとうにシンプルなことなのだと気づかされます。最小限のことばで語られる詩人の谷川俊太郎さんのひとことひとことは、しっかりとした重さをもって読む人の心にゆっくりとしみこんできます。そのことばとともに、江頭路子さんが描く子どもたちののびやかで生き生きとした姿を見ていると、大人が絶対にまもっていかなければならないのは、ここに描かれているような子どもたちの何気ない日常と曇りのない笑顔なのだと強く感じるのです。
複雑で難しい言葉ばかりが行きかって混乱を呼んでいる今だからこそ、大切なことはシンプルなことだと忘れないためにしっかりと受け止めていきたい1冊です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
続きを読む
谷川俊太郎の言葉で語られる戦争への思い、江頭路子の絵の透明な生命力。
人間の知恵はどこにあるのかを、静かに問いかける絵本。
子どもに戦争を伝えるということはたいへん困難です。
それは、事情が複雑で説明に相応の文字量が必要なこと、
すでに失われたモノ、コトバ、価値観がとても多いからです。
その「戦争」を最小限の言葉で、本質を表現しようという試みがこの作品です。
若い作家(画家)と組みたい、という谷川さんの希望で、
絵は江頭路子さんに描いていただきました。
子どもたちの未来がどのようなものになるのかを、
人間をとりまく自然、宇宙のなかで考えるという着想が、
希望を提示して新鮮な展開を作り出しています。
続きを読む