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ライオンが大好きな男の子アンディの目の前に、ほんもののライオンがとびだしてきました。さあ、たいへん! でもアンディは平気です。ライオンはアンディの親友だったのです。


英語版の表紙を見て「古そう……」という印象を抱いていたのですが、いやいやとてもすてきな作品でした。米国に住んでいると、その頃のお話って(公民権運動が起きる前ですから)どうしても人権を無視した内容じゃないか、とか、差別的な表現があるんじゃないか、などと勘ぐってしまうのです。(こんな邪推を入れるとは、わたしの方がbias=偏りのある見方ですね。)でも、そんな偏狭的な視点の絵本であれば、こんなに長い間読み継がれているわけもないので、とりあえず娘と邦訳版のページを開いてみると、結果は大正解でした。
図書館からライオンの本を借りてきたアンディは、あけてもくれても頭の中はライオンのことばかり。(こういうときってありますよね。)そんなある日、学校に行く途中で、なんと!本物のライオンに遭遇してしまいました……。
副題は「しんせつをわすれなかったおはなし」です。アンディがライオンに夢中になる姿、アンディとライオンの関係、アンディの家族の描かれ方が、作者ならではの視点です。幼い子どもの心理をよく理解しているとでもいうのでしょうか。娘はちょうど主人公ぐらいの年頃なので、共感できるところがたくさんあったようです。1ページ1ページ、驚き、喜びの声、ためいきをもらしながら聞いていました。始まりと最後のページの関連性が、お話の奥行きをぐーんと深めていますね。心が温まり、空想の世界にも遊べるすてきなお話です。 (ムースさん 40代・ママ 男の子10歳、女の子5歳)
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